相続時における節税対策として不動産を活用することはよく知られています。
不動産の中でもさらなる節税効果を期待できるのがタワーマンション節税です。
実は最近になって、このタワマン節税に国税庁がメスを入れ始めました。
行き過ぎた節税対策を防ぐため、タワマンの課税強化を検討しているらしいのです。
今回は注目を集めるこのタワマン節税にスポットを当てたいと思います。
不動産と現金の価値は同じではない!?
まずはタワマン節税の内容に入る前に、相続時にそれぞれの財産はどうのように評価されるのかチェックしてみましょう。
現金・預金と不動産の評価の違いに注目してみてください。
〈現金・預金〉
現金も預金もそのまま額面通りに評価される。
例)預金5,000万円+現金5,000万円=1億円で評価される。
〈不動産〉
土地は路線価により評価される。目安としては時価の80%程度。
建物は固定資産税評価額により評価される。目安としては建築価格の70%程度。
例)土地5,000万円×80%=4,000万円で評価される
建物5,000万円×70%=3,500万円で評価される
例を見てみると、現金と不動産では不動産の方が2,500万円ほど低く評価され、その差額分が節税効果となります。
興味深い財産評価ですよね?相続時の評価に限ると、現金1億円と1億円で購入した不動産の価値は同じではないのです。
そのため、不動産は節税対策としてよく活用されます。
国税庁が毎年度発表している「相続財産の金額の構成比の推移」を見ると、年々減少傾向にはありますが、相続時の財産として不動産の割合は約50%を占めているのが分かります。
タワマンは節税にかなり効果的!
次にタワマンが更に節税に効果的だという理由を説明します。
実はこれも相続財産評価の算出方法に関係しています。
例えば時価で考えると、30階建てタワーマンションの場合、同じ面積、間取り、方角だとしても15階にある部屋と最上30階の部屋の価格は全然違ってきます。
しかし、相続財産評価としての価値は30階でも15階でも2階でも同じ価値として評価されてしまうのです。
同じマンションのA部屋とB部屋を例にタワマン節税がどれだけ効果的か見てみましょう。
ちなみにこのタワマン全部屋の平均時価は7,000万円、相続税評価額は時価の80%と仮定します。
〈タワマン節税の仕組み〉
A部屋の概要
30階建マンションの30階部分、間取り3LDK、面積70㎡、南向き
時価=1億円
相続税評価=7,000万円×80%=5,600万円
時価ー相続税評価=4,400万円の節税効果
B部屋の概要
30階建マンションの15階部分、間取り3LDK、面積70㎡、南向き
時価=7,000万円
相続税評価=7,000万円×80%=5,600万円
時価ー相続税評価=1,400万円の節税効果
お分かり頂けたでしょうか?
つまり、タワマンの高層階の部屋を購入すれば、時価としての価値は高いまま、相続税評価額は下階の部屋と同じにすることができるのです。
よく利用するやり方としては、相続発生前にタワマンの高層階を購入し、一旦、相続評価額を下げておいて相続時に節税し、相続評価が終わった後に時価で売却して現金化するというスキームです。
現在、このタワマン節税は富裕層を中心にブームとなっています。
折しも現在は、日本銀行によるマイナス金利政策によって不動産マーケットにお金が流れ込んでいます。
タワマンの値上がりを狙って売却益をも確保できる環境になっていることもブームの一因かもしれません。
タワマン節税の行方はいかに
さて、この節税効果絶大なタワマン節税法ですが、最近になって国税庁が過度な節税を防ぐべく目を光らせています。
2016年9月現在で具体的な規制は発表されておらず、国税庁は「2018年からの規制強化に向けて検討中」としているので、どのような規制になるかはまだまだ不透明です。
果たして、このタワマン節税は今後どうなっていくのでしょうか?
今は相続税基礎控除額縮小の法改正からも見られるように経済格差を是正すべく所得の再分配を求める声が強い時代です。
将来的には従来通りのタワマン節税効果は無くなるであろうと思っています。
現在、都心を中心にマンションの価格は上昇傾向にあります。
節税目的の投資ではなく、居住用として購入を希望している方の手が届かない価格になってしまっている「歪み」についても真剣に考えていく必要があるように思えます。