2016年基準地価から不動産市況を読み解く〜全国版〜

先日、国土交通省が2016年7月1日時点の基準地価を発表しました。

3年程前から都市部を中心に地価は回復傾向にあるものの、地方は依然厳しい状態が続いています。

今回は、この基準地価の結果から現在の不動産市況のトレンド、特徴などを見ていきたいと思います。

全国の全用途地価は25年連続の下落!

はじめに全国各地の基準地価の前年対比から見ていきましょう。

〈全国〉
住宅地:-0.8%

商業地:+0.005%

全用途:-0.6%

〈3大都市圏(東京、大阪、名古屋)〉
住宅地:+0.4%

商業地:+2.9%

全用途:+1.0%

〈地方4都市(札幌、仙台、広島、福岡)〉
住宅地:+2.5%

商業地:+6.7%

全用途:+4.0%

〈地方圏〉
住宅地:-1.2%

商業地:-1.1%

全用途:-1.2%

まず注目すべきは、全国の商業地が僅かながらプラスに転じたことでしょう。

商業地のプラスは9年ぶりの快挙となり、不動産市況の回復が実感できる結果となりました。

しかし、地方圏の地価下落が足を引っ張るかたちとなって、住宅地、全用途は相変わらずマイナス傾向が続いており、全用途に至ってはなんと今年で25年連続の下落となってしまいました。

バブルの後遺症はまだまだ残っています。

3大都市圏は、前年に引き続き地価の動きは堅調です。

住宅地の増加はさしたるものではありませんが、こちらも商業地の伸びが目立つ結果となりました。

次に地方4都市ですが、今回の基準地価で1番目を惹く結果になったのではないでしょうか?

まず何より高い地価上昇率です。

住宅地、商業地、全用途において、3大都市圏より2倍以上の上昇率となり、地価回復の地方中枢都市への波及を感じさせられる結果となりました。

なお、こちらでも商業地は6.7%と高い上昇率となっています。

一方、相変わらず厳しい状態が続いているのが、地方圏です。

下落幅は縮小傾向にあるものの、依然として地価下落は継続中です。

今回の基準地価をまとめると、都市部を中心に地価回復は継続中と言えるものの、地方圏は地価下落に歯止めがかからず、2極化が更に拡大する結果となったと言えるでしょう。

キーワードは訪日外国人観光客と緩和マネー

次に2016年基準地価の結果を受けて、不動産市況のトレンドや特徴を探ってみたいと思います。

既に紹介した通り、今回の発表では下記条件の地価上昇が目立つ結果となりました。

①地方中枢都市
②商業地

そして、この2点に共通するキーワードが「訪日外国人観光客」と「緩和マネーの流入」です。

政府と日銀が主導する金融緩和と、訪日外国人観光客のインバウンド消費が今回の地価上昇に寄与していると推測できます。

現在、訪日外国人観光客数は凄い勢いで増加しています。

2015年と比べて20%〜30%の割合で増えており、2016年の今年は大台の2000万人を突破すると見込まれています。

外国人の観光客というと、少し前までは中国人富裕層の爆買いを想像してしまいますが、今は買い物だけを目的としない東京や大阪以外の地方都市にも足を伸ばす旅行者が増えているようです。

そこに都市部から流れてきた緩和マネーが地方観光地の再開発を促し、ホテルや大型商業施設の開発ラッシュに繋がって地価上昇を誘引する構図となっています。

最近になって、不動産業界関係者からミニバブルの懸念の声が聞かれますが、行き場を失った緩和マネーと訪日外国人観光客の増加はしばらく続くと予想されるため、都心部や地方中枢都市の地価回復は今後も続くと思われます。