2017年公示地価から不動産市況を読み解く②

前回に引き続き、現在の不動産市況を2017年公示地価から読み解いていきたいと思います。

今回は地方編ということで、全国の地方都市に焦点を当てて、公示地価の動向を見ていきたいと思います。

東京では商業地を中心に地価の上昇が顕著に表れていましたが、地方都市はどのような結果になったのでしょうか?

地方都市も商業地の上昇が目立つ結果に

北海道エリア

北海道は、住宅地や商業地などを含めた全用途平均で26年ぶりに地価が上昇に転じました。

これはバブル期以来の快挙であり、訪日外国人観光客の増加によるホテル開発などの投資需要が地価を押し上げたようです。

北海道の中心地である札幌市は全用途平均で前年比3.2%の上昇となり、4年連続の上昇となりました。

また、札幌市以外の小樽市、釧路市、函館市なども前年比で地価は下落しているものの、下げ幅が縮小するなど下げ止まりが見えてくる結果となりました。

東北エリア

宮城県は、全用途平均で前年比3.0%の上昇となり、上昇は今年で5年連続となりました。

特に住宅地では、仙台市若林区白荻町の上昇率が12.3%となり、上昇幅では全国1位の結果となっています。

また、仙台市は商業地も好調で、平均して約9%の上昇となりました。

その一方で、青森県や秋田県などは、引き続き地価が下落傾向にあり、2017年も厳しいものとなりました。

青森県は住宅地が1.2%、商業地が1.4%の下落、秋田県はさらにひどく、住宅地が2.7%、商業地が3.2%の下落を記録しています。

これらの主な要因は人口の減少によるものと考えられ、今後も人口流出による地価下落の傾向は続くものと推測されます。

関東エリア

千葉県は、全用途平均で前年比0.4%の上昇となり、全国平均並みの結果となりました。

上昇率は2016年と同じ水準で、今年で4年連続の上昇となっています。

少しずつですが、着実に地価が回復している様に感じられます。

特に千葉県で注目したいのが、アクアライン周辺エリアの地価上昇率です。

この辺りは最近、アウトレット施設や大型ショッピングモールなどが相次ぎオープンしており、商業地の上昇率が、君津市が6.3%、成田市が2.8%を記録し、千葉県平均の上昇率アップに寄与しています。

埼玉県は、住宅地が0.1%、商業地が0.8%の上昇となり、住宅地については3年ぶりに上昇に転じました。

前年に引き続き、商業地、住宅地ともに、さいたま市大宮区、さいたま市浦和区の上昇が目立つ結果となっています。

神奈川県は、商業地が1.6%の上昇と健闘したものの、住宅地は昨年比で変動なしという結果になりました。

同県では、リニア中央新幹線の開業を見越して、相模原市などが高い上昇率となりました。
東京については、前回のコラムで詳しく紹介しましたので、そちらをご覧頂ければと思います。

こうして見ると、同じ関東エリア内においても地価の上昇と下落の二極化が表面化しているように感じられました。

中部エリア

愛知県は、住宅地が0.6%、商業地が2.4%の上昇となり、住宅地は5年連続、商業地は6年連続の上昇となりました。

特に名古屋市の上昇率が高く、最近活発になっている名古屋駅周辺の大規模再開発による地価の押し上げが寄与したと考えらえます。

その一方で、三重県や岐阜県などは、住宅地、商業地とも下落しており、今年で25年連続の下落となっています。

東北エリアの青森県や秋田県と同様に地価回復には未だ遠い位置にいるようです。

今回は東日本を中心に地方都市の公示地価を見てきましたが、共通しているのは商業地の上昇率が強いということです。

地価が回復し始めた2013年頃は、東京や大阪など一部の大都市のみが上昇していましたが、今年の発表では地方都市にも地価上昇の波が波及しているように感じられました。

しかし、一部の都道府県では相変わらず地価下落が続いており、厳しい現状となっています。

全国的に地価動向の二極化がさらに拡大しているように感じられました。

次回は、西日本の地方都市を中心に公示地価の動向を見ていきたいと思います。