「定期借家契約」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか?
日頃から不動産に関わっている人でない限り馴染みのない用語だと思います。
この定期借家契約は、将来、建物の建替えや大規模修繕を検討中で、どのように借主を立退きさせるか悩んでいる不動産オーナーにとって強い味方になる契約です。
今回は通常の賃貸借時に締結する「普通借家契約」との違いを踏まえながら、定期借家契約の特徴、メリットを紹介したいと思います。
借主を退去させるのはかなり難しい
借主を退去させるのは、そう簡単なことではありません。
通常、建物の賃貸借に関しては借地借家法という法律が適用されます。
この借地借家法は、もともと不動産を所有することができない経済的に不利な立場に置かれている借主を保護する目的で明治時代にできた法律です。
当初は「建物保護法」という名称でしたが、数回の名称変更を経て、今の借地借家法となりました。
要は賃借人を守るための法律なため、貸主であるオーナーにとってはだいぶ不利な内容となっています。
例えば、普通借家契約の期間経過後、貸主が契約更新をしたくない場合は契約期間満了の1年から6ヶ月前までの間に借主に対して更新をしない旨の通知をしなければなりません。
また、この更新拒絶には「正当事由」が必要で、正当事由が無い場合、契約は自動的に同一の条件で更新されてしまいます。
これを法定更新と言います。
正当事由の定義は非常に曖昧になっており、例えば、借主が家賃を2ヶ月分滞納しているから、それを正当事由に直ぐに更新拒絶が出来るかというと、それだけでは難しいと思われます。
まずは支払の督促をするなど一定の手続きを踏まなければならず、手続きを踏んだとしても100%退去させることが出来るわけではありません。
それくらい借地借家法の普通借家契約は借主保護の法律なのです。
貸主と借主の権利は平等では無いのです。
また、更新拒絶が出来たとしても、よっぽど借主に非が無い限り、貸主であるオーナーから立ち退き料をを払わなければならないケースが多く、場合によっては立ち退き料が高額になり、金銭トラブルに発展するリスクもあります。
定期借家契約を活用する
そこで、トラブルにならず、借主をスムーズに退去させることができる定期借家契約を紹介します。
この法律は平成12年認められたばかりの比較的新しい契約形態になります。
定期借家契約の最大のメリットは、契約更新しない旨の特約を借主との間で結べることです。
つまり、例えば契約期間2年の定期借家契約を締結した場合、借主が契約更新を希望していたとしても、2年が経過すれば契約終了となり退去しなければなりません。
正当事由も必要無しです。借主保護が強い普通借家契約に比べると、定期借家契約は貸主と借主のパワーバランスは同等といったところでしょうか。
定期借家契約の概要
<期間>
貸主と借主が合意した期間
<内容>
契約の更新がない旨の特約を認める契約
<方法>
①書面によって契約(普通借家契約は書面の必要は無く口頭でも可)
②貸主は借主に事前に書面を交付し、賃貸借契約に更新がなく期間満了する旨を通知
③契約満了の1年前から6ヶ月前までに貸主は借主へ契約終了の通知をする必要あり
定期借家契約は通常の普通借家契約と違い、書面によって契約しなければならない等の決まりはありますが、負担は大きくありません。
ただし、注意が必要なのは、既に普通借家契約を締結している既存の借主との契約を定期借家契約に切り替える場合には家賃を下げるなど、ある程度オーナーから条件を譲歩しなければ借主は首を縦に振ってくれません。
それに比べると、新規入居者の方が相手も更新できない事を知った上で契約するのでスムーズに進めることができると思います。
アパートの建て替えや大規模修繕を検討しているオーナーの方は、将来を見越して、定期借家契約を活用してみてはいかがでしょうか?