不動産を売却したら確定申告が必要なの?気になりますよね。
- 確定申告はやったことあるけど、不動産売却の確定申告は初めてで不安だ
- 不動産会社の人から確定申告が必要だと言われた
- 自分が確定申告の対象になっているか知りたい
- 確定申告をどのようにやるのか知りたい
この中の1つでも当てはまる方には、ピッタリの記事です。
結論から先に言ってしまうと、確定申告の義務が有る・無いに関わらず、確定申告をしたほうが金銭面で多くの恩恵を受けることができます。
「確定申告の概要」「確定申告の必要なケース・不要なケース」「確定申告の方法と必要書類」「確定申告することによる節税メリット」などを中心に解説していきたいと思います。
この記事を読めば、不安だらけだった不動産売却後の確定申告も、自信を持って手続きできるようになります。長い記事なので、気になる所だけ読んでいくスタイルでどうぞ。
確定申告とは1年ごとに所得にかかる税金を計算し、納税することを目的とする申告手続き
そもそも確定申告とは「1年ごとに所得にかかる税金を計算し、納税することを目的とする申告手続き」のことです。ご自身が住んでいる地域を管轄する税務署へ必要書類を提出することによって行われます。
提出する時期は毎年決められており、基本的には、確定申告の対象となる年の翌年2月16日〜3月15日までです。期間が1ヶ月程度しかないため、あらかじめ余裕を持って書類を準備しておくことが大切です。
しかし、確定申告と言われても、一般的なサラリーマンやOLなどの会社勤めの方にはあまり馴染みが無いかもしれません。
通常、会社員の所得の申告は、会社が「年末調整」というかたちで会社員に代わり手続きをしてくれます。年収2,000万円超の方や本業以外に副業をしている方を除けば、確定申告をしないのが普通です。
確定申告を行わない場合のペナルティ
確定申告を行わない場合は「ほ税」と呼ばれる罪に問われます。いわゆる「脱税」です。脱税は重篤な罪なので、発覚した場合は、無申告加算税・延滞税・重加算税などが加算されます。
悪質な場合は刑事罰に問われます。なお、「確定申告が必要ないと思ったら必要だった」という場合は、それが分かった時点でできるだけ早く税務署に相談してください。
不動産を売却して利益が出たときは確定申告が必要
不動産の売却によって得た売却益とは、法律の専門用語では「譲渡所得」と呼ばれ、譲渡所得にかかる税金を「譲渡所得税」と言います。
譲渡所得税を確定申告の定義に置き換えると、「売却益(譲渡所得)に対する税金(譲渡所得税)を計算し、納税することを目的とする手続き」が不動産売却における確定申告ということになります。
この譲渡所得はあくまで売却益という意味です。したがって不動産を売却した価格(成約価格や売買価格)とイコールでは無く、次の計算式によって求めることになります。
<譲渡所得(売却益)の求め方>
譲渡所得 = 不動産の売却価格-(不動産の取得費+不動産売却にかかった諸経費)-特別控除
<譲渡所得税の求め方>
譲渡所得税 = 譲渡所得 ×税率
この計算式にそれぞれの金額を当てはめて、譲渡所得がプラスになれば譲渡所得税がかかることになるので、確定申告をする必要があります。
不動産の売却価格とは成約価格のこと
不動産の売却価格とは、実際に売却できた成約価格のことです。不動産の売却価格を証明するものは、主に売却時の売買契約書となります。
不動産の取得費とは購入時の金額から建物の減価償却分を控除した金額のこと
不動産の取得費とは、売却した不動産の購入時の金額から建物の減価償却分を控除した金額のことです。建物は新築時から年数が経過することによって、劣化等により価値は目減りすることになります。その減価分を考慮して取得費に反映させようというのが建物の減価償却です。
ちなみに土地には減価償却という考え方は無いので、不動産の場合は建物のみを考慮すればOKです。減価償却は、耐用年数に沿って毎年一定の金額を建物の価値から控除していきます。耐用年数は、建物の構造によって違いがあり、一般的な木造戸建てであれば20年~22年、マンションなどの鉄筋コンクリート造であれば47年となります。
耐用年数については、この記事で詳しく解説しているのでご興味のある方はご覧ください。
不動産の取得費を証明するものは、主に購入時の売買契約書となります。なお、登記費用も取得費に含まれる場合も多いですが、ケースバイケースなので税務署や税理士にご確認いただくのが確実です。
譲渡所得税の税率は5年を境に倍近く変動する
譲渡所得税の税率ですが、売却した不動産を保有していた年数によって違ってきます。
不動産の所有期間が5年を超える「長期譲渡所得」になるか、5年以下の「短期譲渡所得」になるかによって異なります。長期譲渡所得の場合は所得税15%+住民税5%と、地域復興税2.1%がかかります。短期譲渡所得の場合は、所得税30%+住民税9%と、地域復興税2.1%がかかります。
不動産の保有期間5年を境に税率が倍近く変わってきますので、注意しておきましょう。
以上のように、それぞれの金額を求めて譲渡所得税を計算します。
譲渡所得が出たにも関わらず確定申告をしない場合は、後になって税務署から「脱税」とみなされる可能性があるので必ず確定申告しましょう。
譲渡所得がマイナスの場合は確定申告は不要だが申告することで特例を受けられる
譲渡所得を計算して、譲渡損失(売却損)が出てしまったとき、確定申告をする義務はありません。しかし、譲渡損失を確定申告することによって、「他の所得と損益通算ができる」「所得から繰越控除できる」という特例を受けることができます。
損益通算とは、他の利益(所得)と他の損失を相殺することです。例えば会社員の給与所得(給料のこと)と不動産売却による譲渡損失を損益通算することが可能です。
年収800万円の方が譲渡損失500万円と損益通算すると、その年の年収を300万円とみなすことができるので、差額500万円分の所得税と住民税を節税することができます。
さらに売却した年の所得よりも譲渡による損失額が大きく、相殺しきれない場合は翌年以降の所得からも繰り越せる「繰越控除」の利用が可能です。売却した年の翌年から最長3年間に渡って利用できます。つまり、売った年と合わせて最長4年間は、所得税等や住民税が軽減されたり、場合によっては0になったりするのです。
通常、源泉徴収によって強制的に所得税と住民税は給料から差し引かれるので、確定申告によって払いすぎた税金が還付されます。確定申告は少し面倒であるのは事実ですが、節税メリットが非常に大きいので譲渡損失が出たとしても確定申告することをおすすめします。
不動産売却の確定申告する2つの方法
譲渡所得税の確定申告は、売却した人の住所地を管轄する税務署へ申告することになります。申告方法は、「必要書類を用意して直接税務署へ出向き提出する方法」と「インターネットでできる確定申告のサービス(e-Tax)を利用する方法」の2通りがあり、どちらかを自分で選択することができます。
1. 必要書類を用意して直接税務署へ出向き提出する方法
税務署へ出向き提出する方法は、税務署まで移動する時間と手間がかかりますが、提出する書類の書き方や譲渡所得の計算の仕方など、直接税務署の職員に聞くことができるメリットがあります。
2. インターネットでできる確定申告のサービス(e-Tax)を利用する方法
一方、インターネットで確定申告する方法は、事前にe-Taxの登録やマイナンバーカードの用意が必要となりますが、税務署にわざわざ出向く必要も無く、期間内であれば24時間いつでもネット上のみで完結するので、忙しく時間が取れない方には非常に便利だと思います。
確定申告をする期間は、毎年2月中旬から3月中旬までの約1ヶ月間となっていますが、申告期間の少し前ぐらいから、税務署が確定申告の説明会を開催してくれます。
説明会は、主に自営業やフリーランスとして働いている方を対象としていますが、説明会と併せて無料相談会なども行っている場合が多いので、興味がある方は参加してみてはいかがでしょうか?
参加費用、相談費用はもちろん無料です。
確定申告に必要な書類
譲渡所得の確定申告をするときに税務署へ提出する書類は次の通りです。漏れなく準備できるように、自分に必要な書類を確認するチェックリストとして活用ください。
<譲渡所得(売却益)・譲渡損失(売却損)が出たときの必要な書類>
- 確定申告書
- 譲渡所得税納付用紙
- 譲渡所得の内訳書
- 不動産売却時の書類(不動産の売却価格を証明するためです)
- 売買契約書のコピー
- 売買代金受取書(領収書)のコピー
- 固定資産税精算書のコピー
- 不動産売却にかかった諸経費(仲介手数料など)を証明する書類のコピー
- 売却した不動産の購入時の書類(不動産の取得費を証明するためです)
- 売買契約書のコピー
- 売買代金受取書(領収書)のコピー
- 固定資産税精算書のコピー
- 不動産の購入にかかった諸経費(仲介手数料など)を証明する書類のコピー
また、特例制度を利用した場合は、上記の書類に加えて次の書類を添付する必要があります。
<3,000万円の特別控除の特例を利用したときの添付書類>
- 売却した不動産の登記簿謄本
- 売却した不動産に居住していたことを証明する書類(水道光熱費の請求書など)
<10年超所有軽減税率の特例を利用したときの添付書類>
- 売却した不動産の登記簿謄本
- 売却した不動産に居住していたことを証明する書類(水道光熱費の請求書など)
※3,000万円の特別控除の特例と同じです
これらの確定申告に必要な書類は、特例を利用したときの「売却した不動産に居住していたことを証明する書類」を除き、国税庁のホームページまたは不動産会社から取得することができます。
確定申告で認められる諸費用、認められない費用
ここでは、売却活動にかかった様々な費用の中で、どのようなものが確定申告で認められる経費かを説明します。税務署から確定申告の経費として認められると譲渡所得の金額を圧縮することができるので、結果的に譲渡所得税の支払いを減らすことができます。
<確定申告で認められる主な5つの費用>
- 仲介手数料
- 印紙代
- 測量費
- 弁護士費用
- 交通費
それぞれについて簡単に説明します。
確定申告で認められる費用1. 仲介手数料
不動産の売買を仲介した不動産会社へ支払う成果報酬です。仲介手数料は、宅地建物取引業法によって金額に上限が定められており、「不動産の売却価格×3%+6万円+消費税」で求めることができます。
例えば、自宅を6,000万円で売却できた場合、「6,000万円×3%+6万円+消費税」となり、不動産会社へ支払う仲介手数料は、200.88万円となります。このように仲介手数料は高額となるので、経費として申告できるよう不動産仲介会社から受領する領収書は大切に保管しておきましょう。
確定申告で認められる費用2. 印紙代
売買契約書に貼付する収入印紙の代金です。不動産の売買契約書は、印紙税法で定められた課税文書に該当しますので、収入印紙を購入して貼付する必要があります。収入印紙は、不動産の売却価格によって購入する金額が変わります。
売却価格が5,000万円以下の場合は1万円の収入印紙、売却価格が5,000万円超1億円以下の場合は3万円の収入印紙、売却価格が1億円超5億円以下の場合は6万円の収入印紙がそれぞれ必要となります。なお、収入印紙は郵便局などで購入することができます。
確定申告で認められる費用3. 測量費
土地や戸建てを売却するときは、隣地との境界線を確定させてから買主へ引き渡すのが通常です。隣地との境界が記された「地積測量図」などの書面があれば問題ないのですが、昔に建てられた住宅などは境界が曖昧な状態になっている場合が多いです。
そのような場合、土地家屋調査士や測量士に土地の測量を依頼して、隣地との境界を確定させた測量図を作成してもらう必要があります。測量の費用相場は、一般的な30坪程度の土地であれば15万円前後です。
確定申告で認められる費用4. 弁護士費用
弁護士に支払った報酬も経費として認められる場合があります。ただし、全てのケースで認められるわけでは無く、個別案件によって判断が分かれてしまうので注意が必要です。
過去に不動産売却による当事者同士の紛争を解決するための弁護士費用を経費として認めた事例がありますが、一般的な自宅の売却活動に弁護士が出てくるケースは無いので、ほとんどの方は該当しないと思われます。
確定申告で認められる費用5. 交通費
買主との価格交渉や売買契約などで移動した際にかかった交通費は経費として認められます。特に新幹線や飛行機などを利用して遠方へ出向いた方などは、忘れずに申告しておきましょう。
<確定申告で認められない5つの費用>
- 引越し代
- 登記費用
- 残置物撤去費用
- リフォーム費用
- 税金(固定資産税など)
次に確定申告で認められない理由を簡単に説明します。
確定申告で認められない費用1. 引越し代
不動産売却に伴う新居への引越し費用は、経費として認められません。
確定申告で認められない費用2. 登記費用
不動産売却に伴う登記費用(抵当権の抹消登記など)は、経費として認められません。
確定申告で認められない費用3. 残置物撤去費用
引越しに伴う家電や家具などの処分費用も引越し費用と同じく、経費として認められません。
確定申告で認められない費用4. リフォーム費用
原則、売却した不動産のリフォーム費用は経費として認められていません。
ただし、買主の要望によりリフォームを条件とした売却の場合は、経費として認められる場合もあります。経費となるかどうかはケースバイケースなので、詳しくは税務署の職員に相談してみてください。
確定申告で認められない費用5. 税金(固定資産税など)
売却した不動産の保有期間中に支払った固定資産税・都市計画税は、経費として認められません。
以上のように確定申告で経費として認められるかどうかのポイントは、「その支出が売却に直接関係しているかどうか」ということになります。
ただし、この部分は非常に判断が難しく個別性が強いため、経費として認められるか分からないときは、税務署に直接聞いてみるのが一番早く解決できる方法です。
確定申告について分からなければ専門家に相談しよう
確定申告を行うには、3つの方法があります。1つは自分で行う方法、2つめは税理士に依頼する方法、3つめは税務署や自治体の施設で説明会を受けながら行う方法です。
税理士に依頼した場合、依頼者は何もする必要はありません。渡す書類さえ間違っていなければミスが発生することもないでしょう。土地を複数売却したなど売買が複雑だった場合は税理士に依頼するのが確実ですし、やり直しの手間などがかかりません。
税務署や自治体が行っている説明会は、専門知識を持つ方がわからないところを教えてくれます。こちらは無料ですので、「やってみたけれどわからないところが多かった」という場合は、説明会に参加するのがおすすめです。
自分自身で計算する場合はぜひ本記事を参考にしてください。どうしても難しい場合は不動産売却を仲介した不動産会社や税務署の職員に質問してみると、サポートしてくれるはずです。