不動産の売買契約を理解しよう【2024年最新版】

不動産の売買を行う場合は、「売買契約書」を売主と買主で取り交わすことになります。

民法では、売主と買主の合意さえあれば、契約書という書面でなくても売買契約は成立するとみなされます。しかし、売買対象となる物件の範囲や売買代金をはじめとする諸々の条件については、後々のトラブル防止の観点からも「契約書」という書面に残すことが通常です。

売買取引を不動産会社が仲介していれば、売買契約書は不動産会社が作成することになりますが、当事者である売主・買主も契約書の内容を把握しておくことが大切です。
ここでは、実際に不動産の売買契約書にどのような内容が記載されているのか、重要な条項を中心に解説していきたいと思います。

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契約書に必ず記載される条項

不動産会社の仲介によって売買契約を締結する場合は、宅地建物取引業法により、不動産会社が売買契約書(「宅地建物取引業法37条書面」とも呼びます)を作成し、売主と買主に交付する義務を負います。

この売買契約書に宅地建物取引士が記名・押印することで仲介責任を負うことになります。また、売買契約書に記載する条項も宅地建物取引業法で決められており、下記の内容を定めることになります。

宅地建物取引業法によって売買契約書(37条書面)に必ず記載される条項

① 当事者の氏名・住所
② 宅地建物を特定するため必要な表示
③ 既存建物の場合、建物の構造上主要な部分等の 状況について当事者の双方が確認した事項
④ 代金・交換差金・借賃の額、支払時期、支払方法
⑤ 宅地建物の引渡しの時期
⑥ 移転登記申請の時期
⑦ 代金・交換差金、借賃以外の金銭の授受に関する定めが あるときは、その額、授受の時期、目的
⑧ 契約の解除に関する定めがあれば、その内容
⑨ 損害賠償額の予定または違約金に関する定めがあればその内容
⑩ 代金または交換差金についてローンのあっせんの定めがあるときは、ローンが成立しない時の措置
⑪ 天災その他不可抗力による損害の負担(危険負担)に関する定めがあるときは、その内容
⑫ 宅地もしくは建物の瑕疵を担保すべき責任または当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置について定めがあるときは、その内容
⑬ 宅地または建物に係る租税その他の公課の負担に関する定めがあるときは、その内容

参考:ちなみに賃貸借の契約書に記載する事項は、下記の通りです。
① 上記①、②、④、⑤、⑦、⑧、⑨、⑪の事項
② 賃料の金額、賃料の支払い時期と支払い方法
③ 賃料以外に貸主・借主間で授受される金銭の額(敷金、礼金など)

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契約書の重要な条項の解説

ここからは、具体的に契約書にどのような内容が記載されているのか、重要な条項を中心に解説していきます。

1.売買物件の表示

売買取引の対象は何なのか、対象の範囲はどこまでなのかを明確にするため、通常は契約書の冒頭に「売買物件の表示」が記載されます。

契約書に明記されるのは、原則として不動産登記簿の表題部に登記された下記のような内容がそのまま転記されることになります。

① 土地
所在、地番、地目、地積

② 建物
所在、家屋番号、種類、構造、床面積

③ マンション(区分所有建物)
所在、マンション名、地目、種類、構造、床面積、家屋番号、敷地権の種類、敷地権の割合

ワンポイント解説

・地目とは、土地の用途です。「宅地」「畑」「道路」「公園」などがあります。一般的な住宅が建っている土地は「宅地」となります。
・種類とは、建物の用途です。「居宅」「店舗」「事務所」などがあります。一般的な住宅は「居宅」となります。
・地積とは、土地の面積のことです。土地の面積を不動産登記簿上では「地積」といいます。

売買物件が未登記だったら

相続による不動産取得が多くなっている現在では、所有者が未登記のまま放置されている物件も少なくありません。所有者の未登記物件は第三者に対する対抗力がありませんので、未登記物件と契約書に記載されている場合、買主は慎重な判断が必要です。

また、住宅ローンを組む際に「登記されている物件」を必須条件にしている金融機関がほとんどです。購入を検討している物件の所有者が未登記の場合は、売主の名義に登記してもらった後で購入するようにしましょう。

2.物件の売買面積

物件価格を決めるには先ず物件の売買面積を決める必要があります。土地、建物(戸建て)、マンションそれぞれの売買面積の決め方を見てみましょう。

土地

土地の売買面積を決めるには、大きく3つの方法があります。

① 公簿売買

② 実測売買(差額清算あり)
③ 実測売買(差額清算なし)

①公簿売買とは

土地の登記簿に記載されている地積(面積)をもって売買面積とし、売買代金を決定する方法です。
別名「登記簿売買」とも言われ、不動産売買取引では最も多い売買面積の決定方法になります。
この方法の場合、契約締結後に土地の実測が行われ、実測面積と登記簿の面積が違っていても、売買代金の清算はありません。

②実測売買(差額精算あり)とは

契約時はとりあえず登記簿上の面積で売買金額を仮決めしておいて、物件の引渡しまでに土地の測量(実測)を行い、その実測面積に基づいて売買代金を決定する方法です。


この方法の場合、契約時の登記簿の面積と実測面積が違っていれば、差額を清算することになります。

③実測売買(差額精算なし)とは

②の方法により、契約時の登記簿の面積と実測面積が違っていても差額の清算を行わないやり方です。

建物(戸建て)

建物の面積は、登記簿の面積を基に売買代金を決めることが通常です。たまに増改築したにも関わらず登記簿の面積が変更されていないケースがあります。

登記簿の面積と現況の面積が明らかに一致していない場合は、その旨が契約書に記載されているか確認しましょう。買主としては、購入後のリスクを減らすためにも売主に面積変更の登記をしてもらってから売買契約を締結した方が良いです。

マンション

マンションの場合も戸建て同様に土地と建物に分けられますが、いずれも登記簿上の面積で売買代金を決めるのが一般的です。注意点としては、マンションの登記簿上の面積は、「内法面積」で表示されますが、物件広告などでは「壁芯面積」で表示されている場合があることです。

通常、内法面積(登記簿面積)は壁芯面積より10%程度面積が小さくなっています。後々、トラブルにならないよう買主に対して、どちらの面積を表示したのか事前に説明する必要があります。

<内法面積と壁芯面積>

内法面積
マンション室内の壁で囲まれた内側の床面積のことです。マンションの登記簿に記載される面積は内法面積になります。
壁芯面積
マンション室内の柱や壁の厚みの中心線から測られた床面積のことです。マンションの広告チラシやパンフレットに記載される床面積は壁芯面積が使われます。

3.境界の明示

売主は買主に対して、売却する物件に境界標や境界杭、ブロック塀などを基準として隣地との境界を明示する義務を負います。

ただし、境界の明示は、売買契約締結時に必ずしも間に合わせる必要はありません。物件の引渡しまでに境界を明確にしておけばよいので、実際の取引では、売買契約締結から引渡しまでの期間に測量することが多いです。

売買契約書には、どのような測量方法で境界を明示するか記載することになります。

<測量図の種類>

・確定測量図
売買対象の土地と隣接している全ての土地(私有地も公有地も含みます)との境界について、隣接土地所有者の立会いのもと境界確認を行い、測量して作成された測量図のことをいいます。
・現況測量図
売買対象の土地と隣接している私有地との境界について、隣接土地所有者の立会いのもと境界確認を行い、測量して作成された測量図のことをいいます。

4.売買代金の支払い時期と支払い方法

売買代金の支払いは、売主から買主へ物件の引渡しのタイミングと同時に行うのが一般的です。

実際の取引では、売買契約締結時に買主から売主へ手付金を支払い、引渡し日(所有権の移転登記をする日)に残代金を支払うことになります。また、売買契約の取り決めによっては、売買契約時から引渡しまでの間に中間金を支払う場合もあります。

5.手付金・手付解除

手付金

手付金とは、売買契約締結時に買主から売主に物件購入の手付として支払われる金銭のことです。
手付金の金額について特に決まりはありませんが、通常の不動産売買だと売買代金の10%~20%であることが多く見受けられます。

この手付金は、前金として売買代金の一部と思われがちですが、厳密には売買代金に充当するまでは売買代金の一部には解釈されないので注意が必要です。

手付解除

手付金は「解約手付」の性格を持ち、売主と買主で特別な取り決めをしなければ、民法の内容が適用されることになります。


買主は手付金の放棄、売主は受領した手付金+手付金の同額を支払う(手付倍返し)ことで売買契約を解除することができます。これが手付解除です。
手付解除を行うには要件を満たす必要があります。それは相手方が履行に着手していない状況であるということです。逆に相手方が既に履行に着手していれば、手付金の放棄や手付金の倍返しをしても解除することは原則できません。

<履行の着手とは>

履行の着手とは下記のような行動を取ることをいいます。
<売主>
所有権移転の登記手続き、抵当権の抹消登記の手続き(住宅ローンが残っている場合のみ)
<買主>
中間金の支払い、残代金の支払い

売主が不動産業者の場合の手付金

不動産業者が売主の場合は、個人間の売買取引と違い、手付金について以下の規制があります。

① 不動産業者が受領できる手付金は売買代金の20%以内でなければならない
② 買主はどのような取決めがあっても手付解除が可能となる
③ 上記①、②より買主が不利な特約は全て無効となる

買主に不利な特約とは、「手付金について手付解除を認めない」「手付金以上の金額を支払わないと買主は契約解除できない」等のことを指します。このように不動産業者が売主の場合は一般人である買主を保護する規制があるのです。
また、不動産業者は「手付金の保全措置」をしなければ、そもそも手付金を受け取ることができません。

<手付金の保全措置>

未完成物件の場合
不動産業者が受領する手付金の金額が売買代金の5%または1,000万円を超える場合は保全措置が必要
完成物件の場合
不動産業者が受領する手付金の金額が売買代金の10%または1,000万円を超える場合は保全措置が必要

6.引渡し・所有権の移転登記

通常、売主からの物件の引渡し(所有権の移転登記)は買主の残代金の支払い(決済)と同じタイミングで行います。不動産会社が作成する契約書のほとんどが、このことを前提とした条項が設けられています。契約書を確認する際には、引渡しの日時と残代金の支払い日時が同じか確認しておきましょう。

ただし、例外として、売主の買替えを伴う売買契約は、「引渡し猶予」という特約が入っていることもあるので予め確認しておきましょう。

<引渡し猶予について>

売主の物件引渡し日を決済日より遅らせることです。
売主の買い替えを伴う自宅売却の際に多く活用される特約です。引渡し猶予の期間は、7日~10日ぐらいが通常です。


売主にとっては、新居への住み替えの途中で一時的な仮住まいをしなくて済むメリットがあります。
一方で買主にとっては、メリットはありませんので、引渡し猶予を認める見返りとして物件価格の値引きを要求することができます。

7.抵当権などの抹消登記

売却物件に抵当権などの第三者が有する権利が付いているときは、売主は引渡しまでに契約書の内容に沿ってそれらの権利を抹消しておかなければなりません。ただし、第三者に賃借している物件(投資物件、オーナーチェンジ物件)は、借家権を付けたままの状態で売却することができます。

売主が抵当権を抹消するためには、住宅ローンを組んでいる金融機関へ残りのローン金額を返済する必要があります。返済金の用意は、物件の売却で得た資金をあてにする方がほとんどだと思いますが、仮に売却価格が住宅ローンの残債を下回る場合は、別途資金の準備が必要になります。

8.固定資産税の清算

固定資産税、都市計画税などの「公租・公課」を清算する内容が記載されています。

固定資産税と都市計画税は、毎年1月1日時点に物件を所有していた人に対して、課税されることになります。そこで売買契約では、売主・買主で税金を分担して清算する必要があります。一般的な分担区分の基準日は、物件の引渡し前日までは売主が負担し、引渡し日当日以降は買主が負担することになります。

9.危険負担

危険負担は、売買契約の締結から引渡しまでの期間に物件が地震や火災、台風などの不可抗力により損害を受けた場合の負担の取り決めを定めた条項です。

民法では、不動産のような特定物に関しては、買主負担を原則としています。しかし、民法の規定をそのまま適用すると、購入した物件が地震で倒壊しても全額を売主に支払わなくてはならず、買主にとって不利な内容となっています。そこで、実際の不動産売買では、特約により民法とは逆の売主負担と定めているケースがほとんどです。

ちなみに自然災害による損害が修復可能な場合は、売主の費用負担で修復してから買主に引渡します。一方、損害が大きく修復不可能な場合は、契約解除を行い、買主の支払い義務は消滅するかたちになります。いずれにしても買主の危険負担は無いかたちになります。

10.損害賠償額の予定

相手方の契約違反によって契約が解除された時は、違反者に対して契約解除によって受けた損害を賠償するよう請求することができます。しかし、損害の大きさを具体的な金額で証明するのは難しい場合がありますので、一般的には事前に損害賠償の予定額を決めておきます。

具体的には、売買契約書に損害賠償の予定額を記載することになります。損害賠償の予定額は売主と買主の合意で決めることになりますが、売買代金の10%~20%程度が通常です。

ちなみに売主が不動産業者であれば、宅地建物取引業法により、損害賠償の予定額を20%超に定めることができません。もし、20%を超える予定額が契約書に記載されていても無効となります。

11.反社会的勢力の排除

暴力団、暴力団関連企業、総会屋などの団体または個人を不動産取引から排除する条項です。

暴力団の排除条例は、2011年10月をもって全都道府県で施行されています。不動産売買契約書においても必ず記載される条項と認識しておいて間違いないでしょう。契約の相手方が反社会的勢力というケースは滅多にありませんが、万が一のトラブルから身を護る必要な条項ですので、あらかじめ確認しておきましょう。

12.住宅ローン利用時の特約

一般の個人間の売買取引では住宅ローンの特約が付きます。略してローン特約と言われるものです。ローン特約は、買主が住宅ローンを組む前提で不動産を購入する場合、万が一住宅ローンが通らなければ売買契約を解除できる特約になります。

買主を一方的に保護する特約となっていますが、買主が住宅ローンを組むのであれば、ほぼ間違いなく付いてくる特約です。売主からすると、せっかく契約を締結したにも関わらず、この特約を理由にまた売却活動をやり直しする羽目になります。

売買契約書には、ローン特約の対象となる融資利用先の金融機関名とローン利用金額が記載されることになります。ローン特約による契約解除を防ぐ為には、第一に買主に物件価格に見合った収入または資金があるか、次にローンの事前審査に問題なく通過したか等の確認を行う事が大事です。

<ローン特約による解除時の仲介手数料>

ローン特約によって売買契約が解除となった場合は、不動産会社へ仲介手数料を支払う必要はありません。仲介手数料は売買取引成立を条件とした成果報酬ですので、解除によって売買取引が成立しなくなれば、支払いの義務は消滅します。


支払いの免除は買主、売主とも同じです。一般的には売買契約時に仲介手数料の半金を不動産会社へ支払うことが多いので、契約解除が明らかになったタイミングで支払った仲介手数料を返金してもらうことになります。

13.瑕疵担保責任

瑕疵担保責任の「瑕疵(かし)」とは売買物件に本来あるべき品質、性能が欠けていることをいいます。

売却した物件に欠陥があれば、売主は瑕疵担保責任によって、買主に賠償することになりますが、瑕疵担保責任は「隠れた瑕疵」に限定されます。

「隠れた瑕疵」とは、買主、売主とも売買物件を注意して調べたにも関わらず、発見できなかった瑕疵のことです。具体的には、雨漏りやシロアリ被害等が挙げられます。

もっとも売主が事前に雨漏りやシロアリ被害等を知っていて、買主に事前に告知していれば「隠れた瑕疵」には該当しませんので、売主が瑕疵担保責任を負うことはありません。

売主が瑕疵担保責任を負わなければならない期間は、一般個人間での売買であれば、引渡し後3ヶ月以内が通常です。一方で売主が不動産業者の場合は、厳しくなり引渡し後2年以内は瑕疵担保責任を負うことになります。

<瑕疵の種類>

瑕疵の種類は大きく4つに分けられます。

① 物理的瑕疵

下記の「ワンポイント解説<物理的瑕疵の範囲>」を参照ください

② 法律的瑕疵

法律の規制によって売買物件の使用収益が阻害された場合(売買物件の立地地域が「再建築不可の地域」に該当しているのに告知されず、買主は建て替えができなかった場合など)

③ 心理的瑕疵

売買物件で過去に自殺や殺人、事件、火災等があり、心理的な面において物件の住み心地に悪影響を及ぼす場合

④ 環境的瑕疵

売買物件の近隣に騒音、振動、異臭等を及ぼす施設、反社会的勢力組織の施設等があり、住環境的な面において物件の住み心地に悪影響を及ぼす場合

<物理的瑕疵の範囲>

売主が負う物理的瑕疵の責任には範囲が決まっており、下記に該当する場合になります。① 構造耐力上重要な部分(住宅の基礎、基礎杭、壁、柱、小屋組、土台、筋交い、屋根、梁等)の腐食、損傷
② シロアリによる被害
③ 雨漏り、漏水
④ 給排水管の設備不良、損傷※「隠れた瑕疵」だとしても、床のキズや建具の不具合などは瑕疵担保責任の範囲外になります。

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まとめ:契約の内容の基本を知って、トラブルを未然に防ごう!

ここまで、売買契約書に出てくる重要な条項の解説をしてきました。

売買契約書は不動産会社が作成するため、記載内容は任せきりになりがちですが、契約の当事者はあくまで買主と売主です。売買契約後にトラブルが発生すれば、買主、売主どちらかの責任を問われる可能性がでてきます。最低限の知識として、ここで取り上げた内容は理解しておくことが望ましいです。

不動産特有の難しい用語はありますが、用語の意味などはさほど難しくありません。事前にきちんと知っておくことで、トラブルを未然に防ぐこともできますし、安心して契約を結ぶこともできます。
ここでの解説が不動産取引にお役に立てれば幸いです。

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