不動産を個人売買したい…できる?
不動産を売却する際、少しでも高く売りたいと誰もが考えます。
不動産売却時には、不動産の販売価格から不動産会社への仲介手数料などが差し引かれてしまいます。トラブルが起こらないために間に入ってもらっているとはいえ、仲介手数料が数十万〜数百万にのぼる場合もあります。
親族や知人に不動産を売却する場合は、売り手は決まっているので、仲介手数料がもったいないと感じることもあるでしょう。少しでも手取り額を多くするために、不動産会社を仲介せず個人で売買を成立させることはできるのでしょうか?
不動産の個人売買は法律で禁じられていない
まず、不動産の個人売買は合法です。不特定多数を相手に継続して不動産売買を行う場合には、免許や届出が必要となりますが、個人間での売買であれば特に届出なども不要で、違法にもなりません。そのため、不動産の個人売買をすることは可能です。
個人売買する場合のリスクも理解する
個人売買が違法でないですが、多くの人が不動産会社に仲介をお願いする理由があります。それは、不動産の個人売買には多くのリスクを伴うという点です。デメリットをしっかりと理解した上で個人売買を選択することは可能ですが、目先のお金だけを考えて個人売買を選択することは非常に危険です。事前に必要なフローな書類、気を付けるべき点などを把握してから個人売買を選ぶようにしましょう。
不動産の個人売買する流れ
まず不動産を個人売買するために全体の流れと注意点を知っておきましょう。そして個人売買が自分に合っているのか、不動産会社へ仲介を依頼すべきか判断できるはずです。不動産売買は非常に高額な取引です。流れを把握し、トラブル対応が自分には厳しいかもと思った場合には、無理せず不動産会社へ仲介を依頼しましょう。
売買の準備:販売価格を決める、書類を取り寄せる
最初にすることは所有する不動産の周辺相場を知ることです。通常は不動産会社が資料を提示してくれるので相場がわかりますが、個人売買の場合は自身で相場を調べ、適切な販売価格を決める必要があります。高すぎると売れませんし、相場より低すぎると損をしてしまいます。
一括査定サイトを利用すると、立地や築年数などの情報をもとに、複数社から査定額を提示してもらえます。査定価格は不動産会社によってバラツキがあるため、3社以上に査定依頼すると良いです。
査定額だけではなく、査定算出根拠を細かく確認して理解することが大事です。販売価格は買主から値下げ交渉されることがほとんどですので、最初は少し高めに設定しておくのがよいでしょう。
また、個人売買の場合、消費税は発生しませんので税抜価格で検討することも忘れないようにしましょう。
そして価格検討と同時並行で、登記簿謄本、固定資産税評価額証明書、公図を管轄の法務局で取得しておきます。
販売活動:問い合わせ獲得から契約前まで
売り手が決まっていない場合には、より多くの人に売却する不動産を見てもらう必要があります。個人でできる販売活動としては、チラシ配布やSNSでの発信に加え、個人売買サイトを利用するのがよいでしょう。
個人売買サイトは無料で利用できるものから、プロの担当エージェントがつくものまでさまざまありますので、自分にあったものを選んでくださいね。物件を気に入ってくれた人から問合せが来たら、いよいよ内見です。スムーズに日程調整を行えるよう予定を調整しましょう。
また、現地での直接価格の交渉をされる場合もあります。○円以下と提示された場合は一旦持ち帰るなど、どこまで下げられるかのボーダーラインを決めておくと慌てずに対応できます。
そして問合せをしてくれた人への対応は丁寧かつ迅速に行うことも、良い条件での売却成立に近づく1歩です。面倒臭がらずに真摯に対応しましょう。
契約締結から引き渡し
販売価格に合意が得られたら、不動産売買契約書と重要事項説明書を作成します。どちらも双方の合意を得られれば特段決まった様式はありませんが、一般財団法人不動産適正取引推進機構などが公開しているひな形を使うと安心です。
買主から売買契約書の合意を得られたら2通作成し、署名捺印の上、売主、買主で1通ずつ保管します。契約書の押印と同時に買主から販売価格の1割程度の手付金を受け取ります。手付金は契約以降、売買関係を破棄しないようにするものです。売主、買主どちらにも契約解除の責任が発生するよう契約書に盛り込んでおくことが大事です。
引渡しの際、残金の受け取りを忘れずに行いましょう。
不動産を個人売買するメリットとは
ここまで不動産の個人売買について一連の流れを見てきました。個人売買に興味をもった人も多いのではないでしょうか。メリット・デメリットをしっかりと理解し、不動産を個人売買するかどうか判断することが重要です。まずは個人売買するメリットを見ていきましょう。
仲介手数料を支払わなくて済む
個人ですべて売買する場合には、不動産会社への仲介手数料が不要になります。仲介手数料の上限額は宅地建物取引業法で次のように定められています。
- 200万円以下:取引額の5%まで
- 200万円超~400万円以下の部分に対して:取引額の4%まで
- 400万円超の部分に対して:取引額の3%以内
※なお、800万円以下の不動産売買における仲介手数料の上限は33万円(税込)に引き上げられました。これは、2024年7月より空き家等にかかる仲介手数料の特例が設けられたためです。
上記に加え消費税が加算され、例えば3,000万円の不動産を売却した場合には、105万6,000円もの仲介手数料を支払うことになります。これだけの金額が節約できたら、さまざまなことに使えますよね。
不動産の売り手を自分で選べる
不動産会社に仲介を依頼することで売り手を見つけてきてくれますが、基本的なやりとりは不動産会社が行うため、買主がどのような人なのか見極めることが難しい場合があります。
特に、愛着のある不動産を売却する場合には、大事に住んでくれる人に売りたいと思う人もいるでしょう。不動産を個人売買する場合の買主対応はすべて自分で行いますので、人柄を見ることもできます。
不動産を個人売買するデメリット
先に挙げたようにメリットが大きい不動産の個人売買ですが、デメリットもたくさんあります。必要以上に不安がることはありませんが、きちんとデメリットも知ったうえで個人売買を選択しましょう。
売却後10年間は契約不適合責任が売主に課せられる
不動産を売却したあと10年間は契約不適合責任が売主に課せられます。これは買主を守るために、民法によって定められているものです。しかし中古の不動産は設備の一部が故障していることが一般的であるため、トラブルを避けるためには売主が売買契約書にしっかりと盛り込んでおくことが大切になります。
また、個人売買時には瑕疵担保保険を付保して売ると、もしも売却後に売主が認識していないひび割れやシロアリによる被害などが見つかった場合にも、保険で修理できておすすめです。
契約書の作成が煩雑
不動産売買契約書は基本的に複数枚に及ぶものが多く、多いものでは数十枚にわたって記載されているものもあります。こうした契約書を一から素人が作成するのは非常に大変です。
不動産売買や賃貸借契約の際、不動産会社と契約書の読み合わせをしたことがある人は多いかと思いますが、そういった内容の契約書を自ら作成する必要があります。
また、売却後に契約不適合責任を問われないよう、契約書に免責事項を盛り込んでおく必要もあります。
なお、契約書には売買価格に応じた印紙を貼ることが義務付けられています。不動産会社が仲介する場合には印紙の貼付漏れがないようアナウンスされますが、個人売買の場合には忘れやすいポイントとなりますので注意しましょう。
適正な価格か判断しにくい
インターネットが普及し一括査定サイトも多数ありますので、昔よりさまざまな情報を収集できます。周辺相場についても一定の情報は出てくるでしょう。ですが、自分が設定した販売価格が適切だと自信を持って言える人は多くなく、やはりプロに相談したくなるものです。また、販売活動期間がまだ短期であるにもかかわらず、買い手が見つからないと勘違いし、相場よりも下げて損をしてしまうこともあります。不動産会社へ相談できない分、値下げするタイミングを見誤って損をしてしまう可能性が高いので注意したいところです。
住宅ローンが組みにくいので、買い手が見つかりにくい
買い主が住宅ローンの審査時に不動産売買契約書や重要事項説明書を提出するケースがほとんどですが、個人間で作成したものは正式な書類として受理されない可能性があります。なぜなら金融機関が取引の実態を判断しにくいからです。
そのため不動産の販売価格によりますが、住宅ローンを組むことを前提とした人は不動産の個人売買は向いておらず、買い手とはならないでしょう。また、不動産情報が掲載されているレインズは個人では登録できません。地道に限られた広告で物件情報を認知される必要がありますので、手間だけではなく時間もかかる場合が多いです。
また、住宅ローン減税制度における「特定取得」にならない可能性もあります。
不動産を個人売買するかは手間とメリットのバランスで検討が必要
不動産の個人売買はリスクやデメリットが多いため、不動産会社へ仲介を依頼する人がほとんどです。あまりおすすめできる方法ではありませんが、しっかりと事前準備を行える人にとっては大きく節約できる方法の一つでもあります。無理のない範囲で検討するとよいでしょう。