遺産相続や離婚のために資産価値の根拠を税務署・裁判所に提出を求められている人、今住んでいる家を売って移住するか検討中の人など、不動産の見積もりを取りたい人の状況はさまざまです。
ただ、はじめて不動産の見積もりを依頼する時に
- どこに見積もり依頼をしたらいいのかわからない
- 早く売り始めたいので、見積もり依頼前に必要な書類を把握したい
- 見積もり金額に何が影響するのか知りたい
などでお悩みの方が多いです。
そこで売却成功につなげるための見積もりの依頼先や、見積もりに必要な書類、見積もりに影響を与える20要素について詳しく解説します。
不動産売却の見積もりの種類は2つ:無料と有料の活用シーン
不動産の見積もりには、無料の「価格査定」と、有料の「鑑定評価」があります。さらに無料の価格査定には、AI査定・簡易査定・訪問査定の3つの種類があります。なお、AI査定と簡易査定をまとめて机上査定と呼びます。
次に、それぞれの見積もりについて解説します。
1. 無料の見積もり:不動産の相場感を知りたい時
前提として、見積もりが無料な理由は、不動産会社の営業活動の一環だからです。不動産会社は不動産を売りたい人と契約を結び、売れた後に成果報酬を貰うという仕組みのため、最初は無料と言っていたのに、見積もりが出てきてから費用を請求されるということはありません。
前述の通り、無料の見積もりには、AI査定と机上査定、訪問査定の3つがあります。
見積もりの種類 | 見積もり期間 | 現地調査の有無 | 手間 | 見積もりの精度 | 特徴 |
AI査定 | 1分程度 | 無し | 少ない | △ | 膨大な取引データを元にAIが想定価格を算出 |
簡易査定 | 3日程度 | 無し | 少ない | ⚪︎ | ・不動産会社の過去の取引実績や地域情報に基づき、人間が想定価格を算出・AI査定と違い、価格の算出根拠を説明してもらえる |
訪問査定 | 1週間後 | 有り | 調査日時の調整や、片付けが必要 | ◎ | 不動産会社が現地に赴き、調査するのでAI査定や簡易査定よりも精度が高い |
ただし後述の有料の見積もりと違い、無料の見積もりは価格に対する法的な責任はありません。
また、調査方法や査定方法は不動産会社によって違うため、複数の不動産会社に見積もり依頼をすると、提示される想定価格は数百万円も差が出る場合もあります
2. 有料の見積もり:相続や離婚などで公的な価格根拠が必要な時
有料の見積もりは、不動産鑑定士に依頼します。相続や離婚時の財産分与のために不動産の価値が知りたい時には、税務署や裁判所などの公的機関で使用できる「不動産鑑定評価書」が必要だからです。
では、有料の見積もりを出すために、どのような調査をするのでしょうか。他の見積もりと比較してまとめました。
見積もりの種類 | 調査する人 | 現地調査の有無 | 見積もりの根拠 |
AI査定 | AI査定サービス提供会社・不動産会社 | 無し | ・不動産の基本情報物件種別物件の所在地物件の詳細情報(建物面積、土地面積、間取り、居住中か、築年数など) ・過去の取引事例データ |
簡易査定 | 不動産会社 | 無し | AI査定の基本情報に加えて、住所から不動産会社が ・周辺施設 ・接道情報 ・防災情報 など |
訪問査定 | 不動産会社 | 有り | 簡易査定の他に、 ・物件の痛み具合 ・設備機器の不具合や交換履歴 ・日当たりや眺望 ・騒音や振動 ・悪臭がないか ・前面道路幅 ・室内のリフォームや増改築の状況 ・傷んだ箇所や不具合の状況 ・土地や建物の傾斜 ・戸建ての場合は境界線 ・マンションの共用部分の管理の状態や管理規約 ・登記簿や公図 ・建物図面などと物件の実情が一致しているか ・ガスや上下水道などのインフラ設備が使える状態か ・建物や土地の所有権、賃借権等、接道の権利の確認 ・利害関係者の把握 など |
鑑定評価 | 不動産鑑定士 | 有り | 訪問査定の他に、 ・国勢調査、経済成長率、景気動向指数、物価指数などの市場分析資料 ・都市計画図、地方自治体の条例、開発指導要綱などの地域資料 ・土壌及び地盤や日影図などの不動産の個別特性がわかる資料 ・現実の取引価格・賃料等に関する事例資料 ・上記の資料と価格形成要因を分析した結果 ・近隣地域にある不動産の標準的使用との相互関係 ・現実の建物の用途が最も市場価値が高いのかの判定 ・複数の手法により求められた試算価格を繰り返し検討して十分に整合性がとれているか、信頼性に問題ないかの判断 など |
また、鑑定評価は他の無料の見積もりとは金額の算出方法が違います。
無料の見積もりは、主に過去の取引事例をもとに算出しています。しかし鑑定評価では、市場分析を通じて価格形成要因を把握し、その推移や動向、要因間の関係を分析します。さらに原価方式・比較方式・収益方式の3つの方式を併用して見積もりを出します。
なお、3つの方式を簡単に説明すると、次のような計算を行います。
- 原価方式:その不動産を再調達する場合の原価を求め、築年数に応じて価格を修正する
- 比較方式:多数の取引事例を収集して適切な事例の選択し、必要に応じて価格補正をし、さらに地域要因や個別要因を比較する
- 収益方式:その不動産が将来生みだすと期待される純収益の現在価値の総和を求める
もし、どの見積もりが最適か迷った場合は、
- まだ売り始めないが、いずれ売るために相場を把握したい場合は「AI査定」
- 納得できる金額なら売りたい場合は「訪問査定」
- 公的機関に不動産の価値を提出する必要があれば「鑑定評価」
をお勧めします。
不動産会社の見積もり依頼前に必要な準備は?不動産の種類別の必要書類
AI査定や机上査定では書類の提出を求められませんが、訪問査定の場合は書類の提出が求められます。そして不動産の種類が戸建てかマンションかで、確認する書類が異なります。書類によっては役所や金融機関に確認する必要があるため、早めに準備を始めましょう。
戸建て・マンション共通で必要な5つの書類
- 本人確認書類
- 実印、印鑑証明
- 登記簿謄本(登記事項証明書)
- 登記権利証または登記識別情報通知書(英数字12桁の情報)
- 固定資産評価証明書または固定資産税納付書
- 火災保険など保険の資料
- 金融機関が発行する返済計画表(償還予定表)や残高証明書など住宅ローン残債がわかる資料
戸建ての場合に必要な7つの書類
- 地積測量図
- 建物図(確認申請図または竣工図など)
- 公図
- 土地の境界が確認できる資料
- 越境の覚書、私道の覚書(あれば)
- 建築確認済証と検査済証
- リフォームや増改築の履歴
マンションの場合に必要な7つの書類
- 分譲時のパンフレット、図面集
- 耐震診断報告書
- アスベスト使用調査報告書
- 管理規約・使用細則
- 管理費・修繕積立金の記載書類
- 長期修繕計画書
- 総会議事録・議案書(直近3年分)
書類以外では、
- 売却を完了したい時期
- エアコンや電気など全ての家具において撤去予定があるのか
- 相続の場合は遺産分割協議は済んでいるのか
- 告知事項は無いか
などを聞かれたときに答えられるとベストです。
なお、告知事項とは、心理的瑕疵・環境的瑕疵・物理的瑕疵・法的瑕疵の4つがあります。それぞれの概要は次のとおりです。
- 心理的瑕疵:過去に死亡事故が発生した、相当期間放置されていた孤独死がある
- 環境的瑕疵:墓地や火葬場などの嫌悪施設が近くにあること、騒音や振動被害などが発生している状態、近隣に指定暴力団構成員等が居住しているなど
- 物理的瑕疵:シロアリ被害や雨漏り、アスベストの使用、耐震強度の不足、地盤沈下、土壌汚染など
- 法的瑕疵:建築基準法や消防法などの法律に抵触している状態(建蔽率・容積率オーバーなど)
見積もり額に影響が出る要素やリフォームの要否を解説
少しでも高く売りたいからリフォームをするか迷う方もいらっしゃると思います。そこで、不動産の見積もり時にプラスになる要素と、逆にマイナスになる要素を紹介します。
プラス・マイナスになる要素に目を通した上で、リフォームの要否をご検討ください。
1. プラスになるうる12要素
- 都心へのアクセスがいい
- 周辺施設(お店・学校・避難所)に近い
- 将来開発が予定されている地域(新しい駅や商業施設が建設される等)
- 災害の危険性が低い
- 新しい耐震基準で建てられたと証明できる
- 日当たりの良さ
- 夜間の静かさ、人通り
- 部屋数が多い
- 駐車場がある
- 公道に接している
- マンションの場合は何階か
- 専門家検査(インスペクション)の結果、構造上の不具合が無いと評価された
このように、築年数や部屋数のような家の個性だけでなく、交通の便や災害リスクなど地域情報も見積もりに大きく影響します。
戸建てやマンションの査定について、さらに詳しく知りたい方は次の記事もあわせてご覧ください。
2. マイナスになりうる8要素
- 新しい耐震基準ができた1981年以前に建てられた建物
- 傷んだ箇所や不具合が多い(シロアリ被害、雨漏りなど)
- 隣人トラブルがある・生活音がうるさい
- 再建築不可・借地権つきの土地
- 土地の形が長方形ではない(台形や三角形など)
- 土地の前にある道路幅が4m未満
- 自然災害リスクが高い地域
- 隣に墓地や葬儀施設、風俗店、騒音や悪臭・振動の程度が大きな施設(工場やガソリンスタンド、高速道路等)がある ※告知事項のこと
これらの内容を包み隠さず見積もり依頼時に伝えることで、より精度の高い見積もりをもらえますし、売り出し価格を決める時にも役立ちます。
また、売却前にリフォームをするかの判断基準にも活用してください。
3. リフォームをしても価格に反映できないケースが多い
実はリフォームをしても、その分が売却価格に反映されるケースはあまり多くはありません。自分でリノベーションをしたいと考える人もいるので、100%リフォームが良い結果を生むとも限りません。
例えば、リフォームをしないと3500万円の家があったとします。浴室やキッチン・トイレなど老朽化した水回りを500万円かけてリフォームを行ったとしても、4000万円での売却は難しく、高くても3700円程度になってしまいます。
しかし、築年数相応の汚れや古い設備を想像する人にとって、リフォームで綺麗な状態をお買い得だと感じ、結果的に早期売却が成功する可能性は高まります。
では、どこを修繕すると効果的なのでしょうか。次の記事で紹介していますので、ぜひ合わせてご覧ください。
不動産会社の一括査定で見積もりを比較!HowMaコラボ査定で物件オーナーが売却価格を決めやすい理由
近年、AI査定や不動産一括査定サイトは増えています。多くの見積もりサービスがある中で、HowMaのコラボ査定を使う4つのメリットと、おすすめできない2つのケースを紹介します。
HowMaのコラボ査定を使う4つのメリット
- 1億件以上の取引データを分析できる「AI査定」に加え、不動産会社の「プロ」の目線の査定を組み合わせることにより、価格や戦略を決めやすい
- 提携している不動産会社は地域密着型や、登録した物件がある地域での売却実績が多い実力派の会社が多く、AIだけではわからない肌感の高い査定が見られる
- 業界大手の不動産仲介会社出身の宅建士がチャットで、第三者の立場から無料サポートをしてくれる
- 最新の相場情報や、周辺の取引事例をAIが常に収集しているので、査定金額に変動があったらメールやLINEで知らせてくれる
HowMaのコラボ査定をおすすめできない2つのケース
HowMaは成長中のサービスのため、次のような方には向いていません。
- 収益物件(投資用一棟アパートや商業ビルなど)や農地、リースバックの査定をしたい人
- 弁護士や税理士への相談も一箇所で行いたい人
まとめ:不動産売却の第一歩は見積もりから!HowMaコラボ査定を活用して売却価格を決めよう
今回は見積もりの種類や、見積もり取得のために必要な書類、見積もりに影響を与える要素を解説しました。不動産の売買では大きな金額が動くので、慎重になったり不安になることが多いです。
最初に不動産の価値を正しく把握し、自分に合った不動産会社を選ぶことが不動産売却の成功の肝です。不動産を適切な金額で売却するために、まずは不動産の見積もりを取りましょう。