上昇相場時における自宅の売却マニュアル〜売り時を見極めるポイントや売却益が出た時の税金などを徹底解説〜【2024年最新版】

近年の不動産マーケットは好調を続けています。大都市圏を中心に毎年地価は上昇しており、地方都市でも底堅く推移しています。

自宅の売却を検討している方は、今が売り時なのか迷っている方も多いのではないでしょうか?

今回は「上昇相場時における自宅の売却」をテーマに、売り時を見極めるポイントや自宅を売却して利益が出た際の税金などについてご紹介していきます。

売り時を見極めるポイント

はじめに自宅の売り時を見極めるポイントとして、近年の不動産マーケットの動向や自宅の相場価格を調べる方法、そして今は果たして売り時なのか、考えていきたいと思います。

同じ不動産でも売却する時期によって価格は大きく変わる

自宅をできるだけ高い価格で売却するには、売却する時期に注意する必要があります。

立地や間取りなど条件が同じ不動産でも、売却時期によって価格が全然違ったというのはよくある話です。

まずは近年の不動産価格の推移について、2024年7月に国土交通省が発表した不動産価格指数(住宅)を見てみましょう。

不動産価格の推移を表したグラフ

グラフを見ると2013年の初頭から現在まで不動産価格が上昇していることが分かるかと思います。

住宅地(黄色い線)や戸建住宅(青い線)が緩やかに上昇している中で、マンション(緑の線)が突出して上昇しているのが特徴的です。

なぜ2013年から不動産価格が上昇し始めたのでしょうか?

それにはいくつかの理由が考えられます。まず影響が大きいのは日本銀行の大規模な金融緩和政策です。

詳しい内容は割愛しますが、2013年に日本銀行の総裁が代わり、政策内容が大幅に変更されました。

その結果、市場に大量のお金が出回ったり、金利が下がったりした影響で株や不動産にお金が向かうようになりました。

ある意味、人工的に作られた上昇相場と言っていいかもしれません。

それ以外にも、人手不足による建設現場人員の人件費上昇や建築部材の価格高騰、2020年東京オリンピックの景気期待なども理由として考えられます。

先ほどのグラフに話を戻しますが、マンション価格は2010年を100として2018年末には140を超えてもうすぐ150に到達しようとしています。

これは2010年と比較してマンション価格が50%近く上昇したことを意味しています。

単純な例を挙げると、立地や間取り、建物のグレードなどマンションの条件が同じだと仮定して、2010年に5,000万円の価値があったマンションが現在は7,500万円に値上がりしていることになるのです。

最近のマンション価格の高騰は、ニュースなどでも取り上げられているのでご存知の方も多いと思います。

同じ不動産でも売却する時期によって売却価格は大きく変わると覚えておきましょう。

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簡単に自宅の相場価格を調べる方法

不動産マーケットが好調の時に一番気になるのは、「現在、自宅には一体いくらの価値があるのか?」だと思います。

自宅の相場価格を調べるには様々な方法がありますが、ここでは簡単にできるものをご紹介します。

  1. 一括査定サイトを利用する
    一括査定サイトは、不動産会社と直接顔を合わせることなく、ネットのみで査定依頼ができる便利なツールです。
    複数の不動産会社に一括で査定依頼ができるため、本気で売却を考えている方も自宅の相場価格を知りたいだけの方も利用している方は多いです。
    一方、一括査定サイトならではのデメリットもあります。自社で媒介契約を取るために、あえて相場価格より高い査定価格を出す「意図的な高額査定」もその一つです。
    また一括査定サイトでは依頼時に電話番号や自宅の住所を入力することが必須となりますが、査定後に不動産会社からしつこい営業を受けることもあるので、利用する際は注意しましょう。
  2. 人工知能(AI)の自動査定を利用する
    もう一つ簡単に自宅の相場価格を知る方法として、人工知能(AI)による自動査定があります。
    AIを活用した自動査定は、価格を知りたい不動産についての簡単な情報を入力するだけで、一括査定サイトより早く自宅の相場価格を知ることができます。
    AIを活用した不動産自動査定サービスのHowMaでは、自宅の相場価格はもちろんのこと、賃貸に出した際の賃料相場価格も知ることができます。
    不動産会社のように営業電話などはありませんので、気軽に利用することができます。
    AIの自動査定は価格の正確さに課題があると言われたりしますが、個別要因が少ないマンションであれば、一括査定にも引けを取らない精度があります。
    その一方、土地や戸建てなど個別要因が不動産価格に大きな影響を与えるものは、AI査定の精度にまだ課題があるので、あくまで参考程度とする方が良いでしょう。
    詳しい内容は次の記事に詳しく説明していますので、ぜひご覧ください。
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果たして今は売り時なのか?

現在も不動産マーケットは好調が続いてますが、2024年は果たして売り時なのでしょうか?

経済誌や不動産業界からは、「もう上昇相場のピークは過ぎた」といった弱気の見方がある一方、「東京オリンピック以降も上昇相場が続く」というような強気な見方もあるなど、様々な意見が出ています。

今後も引き続き上昇相場が続くのであれば、誰しもがもう少し我慢して相場が上がりきったところで売却したいと考えます。

しかし残念ながら、上昇相場の天井がいくらなのか、いつ来るのかは誰もハッキリと断定することはできません。

ただ事実として一つ言えることは、2010年と比べると明らかに今は不動産価格が上昇しているということです。

自宅の相場価格を調べてみて自分が納得する価格であれば、売却を検討しても良い時期なのだと思います。

自宅を売却するときの流れ

ここからは実際に不動産を売却するときの流れと必要な手続きについて解説していきます。

途中いろいろな専門用語が出てきますが、どれも売却活動を成功させる上で大切なものですので、しっかりと理解しておきましょう。

自宅の査定

自宅の売却活動は、不動産会社に査定を依頼することからスタートします。

今回は自宅の相場価格を知るためではなく、実際に売却活動を行うための査定となりますので、不動産会社から出た査定価格が本当に売れる価格なのかどうか見極める必要があります。

不動産に詳しくない一般の方にとって、査定価格の妥当性を見極めるのはハードルが高く感じられるかもしれません。

ポイントは、「複数の不動産会社に査定依頼をする」と「査定価格の根拠がしっかりしているか確認する」の2点です。

自宅の査定は複数(5〜6社)の不動産会社に依頼しましょう。不動産売買のプロである不動産会社でも査定価格は会社ごとにバラバラです。

中には媒介契約を取るために意図的に相場価格より高い価格を出してくる不動産会社もあります。

複数の不動産会社に依頼をすることにより査定価格の平均値を知ることができるので、相場価格と乖離した査定を出してきた不動産会社を除外することができます。

また、現在の不動産マーケットの動向や売却する不動産の需給環境など情報収集する意味でも複数の不動産会社に依頼をするのはメリットがあります。

それともう一つ、査定価格に明確な根拠があるか確認する事も大切です。

よく勘違いされやすいのですが、査定価格は実際に売却できる価格とイコールではありません。

なぜこの査定価格になったのかハッキリと説明できない不動産会社の査定は信憑性に欠けます。特に「高値で売却できるよう頑張ります!」というような精神論で押し通すような不動産会社には注意しましょう。

査定についての詳しい内容は次の記事にまとめていますので合わせてご覧ください。

また、売却活動を依頼する不動産会社の選び方については次の記事にまとめていますので参考にしてみてください。

媒介契約の締結

査定結果を見て自宅の売却活動を任せても良い不動産会社と出会えたら、続いてはその不動産会社と媒介契約を締結します。

媒介契約とは、聞き慣れない言葉ですが、簡単に言うと自宅の売却活動を不動産会社に依頼したことを証明する契約の事です。

媒介契約の締結に際して何か費用が発生することはありません。

媒介契約には「一般媒介契約」、「専任媒介契約」、「専属専任媒介契約」の3つのタイプがあります。

不動産の仲介における媒介契約の種類と特徴を比較した画像

基本的に不動産会社は自社1社で売却活動が独占できる「専任媒介契約」や「専属専任媒介契約」を勧めてきます。

どのタイプの媒介契約が良い悪いということはありません。

それぞれの特徴を考慮した上で自分に合った媒介契約を選択しましょう。

なお、媒介契約についてもっと知りたい方は、次の記事を参考にしてみてください。

媒介契約を締結したら、いよいよ本格的に売却活動がスタートします。

売買契約の締結

売却活動の結果、買主が見つかったらいよいよ売買契約の締結に移ります。

売買契約書は仲介する不動産会社が作成してくれますが、契約内容は当事者である売主と買主に大きく影響します。

契約書の記載事項について、売主と買主でそれぞれ注意しなければならないポイントがあります。

売主としては、特に「瑕疵担保責任の内容」と「売買契約の解除条件」の2点については最低限理解しておくようにしましょう。

一般的に売買契約当日までに「契約書の読み合わせ」ということで不動産会社が売買契約書の内容を説明してくれます。

途中で分からない単語や条項が出てきたら積極的に質問をしてモヤモヤを解決しておきましょう。

なお、売買契約に関するもっと詳しい内容は、次の記事をチェックしてみてください。

物件の引き渡し(決済)

売買契約が無事に済んだら、最後に買主へ自宅を引き渡します。

引き渡しは決済日と同日に買主が住宅ローンを組む銀行で行われます。

当日は、まず買主から売主へ売買代金の残金が支払われます。

着金確認後、今度は売主から買主へ売買不動産の鍵を引き渡します。

登記簿の所有権の移転手続き(売主→買主)については、司法書士が法務局に申請してくれますので、売主として何か手続きをする必要はありません。

物件の引き渡しが済んだら売却活動はこれで完了となります。

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自宅の売却で利益が出たらどうする?

不動産マーケットが上向いている時に自宅を売却すると、思わぬ売却益を手にすることがあります。

不動産の売却によって得た売却益は、難しい言葉で「譲渡所得」と言い、譲渡所得の金額に応じて「譲渡所得税」を支払う必要が出てきます。

ここでは自宅の売却で利益が出た時のために、譲渡所得、譲渡所得税の計算方法や譲渡所得税を節税できる特例制度などをご紹介していきます。

譲渡所得(売却益)と譲渡所得税の計算方法

まずは譲渡所得の計算方法について見ていきます。

譲渡所得は不動産の売却益のことですが、単純に自宅の売却価格から自宅の購入価格を差し引いて譲渡所得(売却益)という事にはなりません。

譲渡所得は、次のような計算式によって求めることになります。

<譲渡所得の計算方法>

譲渡所得 = 自宅の売却価格 ー (自宅の取得費 + 自宅の売却にかかった諸費用)ー 特別控除
※特別控除は適用条件に該当する場合のみ

この計算式にそれぞれの金額を当てはめて、譲渡所得がプラスになると譲渡所得税が発生することになります(譲渡所得税の計算方法は後ほど紹介します)。

なお、譲渡所得、譲渡所得税が出た場合は確定申告が必要になります。

  • 自宅の売却価格とは
    実際に自宅が売れた価格です。売買価格、成約価格とも言います。自宅を売却した時の売買契約書に金額が明記されています。
  • 自宅の取得費とは
    売却した自宅の購入時の価格から建物の減価償却分を差し引いた金額です。自宅の取得費=自宅の購入価格ではありませんので注意しましょう。減価償却は建物の構造によって耐用年数が変わってきます。一般的な木造の戸建ては20~22年、マンションなどの鉄筋コンクリート造(RC造)であれば47年となります。ちなみに土地に減価償却という概念はありません。自宅の取得費は、自宅を購入した時の売買契約書などの書類によって証明されます。なお、購入時の契約書を紛失してしまい、自宅の取得費を証明できない場合は、「取得費の5%ルール」が適用されることになります。取得費の5%ルールを適用すると、自宅の売却価格の5%を自宅の取得費として計上することができます。例えば、自宅の売却価格が5,000万円であれば、自宅の取得費は150万円となります。
  • 自宅の売却にかかった諸費用とは
    自宅の売却に際してかかった仲介手数料や印紙代などの諸費用です。自宅の修繕費や固定資産税などは費用として認められませんので気を付けましょう。

譲渡所得の金額が分かったら、続いては譲渡所得税の計算を行います。

<譲渡所得税の計算方法>

譲渡所得税 = 譲渡所得 × 税率(20% or 39%)

譲渡所得税の税率は、売却した自宅の保有していた期間によって変わってきます。

保有期間が5年を超えていると長期譲渡所得として税率は20%、5年未満だと短期譲渡所得として39%となります。

5年の保有期間を境に税率が2倍となるので、譲渡所得税を節税するためには売却するタイミングも重要となります。

ここまで譲渡所得と譲渡所得税の計算方法を解説してきましたが、不動産に詳しくない一般の方にとって自力で計算するのは、なかなかハードルが高いと思います。

そんな場合は、最寄りの税務署に相談してみてください。

計算方法や確定申告のやり方などいろいろとアドバイスをしてくれます。

絶対に利用したい!3,000万円の特別控除の特例

ここまで解説してきた通り、自宅の売却で譲渡所得がマイナスになれば譲渡所得税は発生せず、売却金額をそのまま手取り金として受け取ることができます。

そこでぜひ利用したいのが「3,000万円の特別控除の特例」です。

この特例は、自宅の売却価格から自宅の取得費と自宅の売却にかかった諸費用を差し引いた金額にさらに3,000万円を控除できる非常に効果が大きい特例です。

3,000万円の特別控除の特例を受けるためには次の条件を全て満たす必要があります。

<3,000万円の特別控除の特例 適用条件>

①自宅として実際に居住していた不動産を売却すること(別荘やセカンドハウスは不可)
②自宅を売却した年の前年と前々年に「3,000万円の特別控除の特例」を利用していないこと
③自宅を売却した年の前年と前々年に「買い換えの特例」を利用していないこと
④売主と買主が親子や夫婦など親族関係でないこと

適用条件を見ると、3,000万円の特別控除の特例は自宅を売却するほとんどの方に該当すると思われます。

この特例を利用すれば、よほど高値で自宅が売れない限り譲渡所得はプラスになりません。一つ具体例を見てみましょう。

前提条件:自宅の売却価格6,000万円(保有期間8年)、自宅の取得費3,500万円、 自宅の売却にかかった諸費用200万円

<3,000万円の特別控除の特例を利用したときの譲渡所得の計算>
自宅の売却価格6,000万円 ー (自宅の取得費3,500万円 + 自宅の売却にかかった諸費用200万円) ー 特別控除3,000万円 = 譲渡所得-700万円
※譲渡所得がマイナスのため譲渡所得税はかからない

<3,000万円の特別控除の特例を利用しなかった場合の譲渡所得の計算>
自宅の売却価格6,000万円 ー (自宅の取得費3,500万円 + 自宅の売却にかかった諸費用200万円)= 譲渡所得2,300万円
譲渡所得2,300万円 × 税率20% = 譲渡所得税460万円

この事例では3,000万円の特別控除の特例を利用したことにより、460万円分の譲渡所得税を節税することができました。

3,000万円の特別控除の特例を利用するには確定申告が必須となりますので、必ず忘れないようにしましょう。

上昇相場における自宅売却時のまとめ

今回は「相場上昇時における自宅の売却」をテーマに、売り時を見極めるポイントや売却活動の流れ、売却益が出た時の税金などについて解説してきました。

冒頭でも触れましたが、2024年現在も不動産マーケットは好調を維持しています。

今後も不動産価格の上昇が続くのか、それとも今が相場のピークなのか、ハッキリしたことは誰にも分かりません。

ただ、10年前と比較すると明らかに今は不動産価格が高くなっています。

まずは現在の自宅の相場価格がどれくらいになるか確認をしてみて、納得のいく価格で売却できそうであれば、実際に自宅の売却を検討してみても良いのではないでしょうか?

逆に不動産マーケットが不調の時、下落相場時における自宅の売却については次の記事で解説しています。合わせてご覧ください。

下落相場時における自宅の売却マニュアル〜住宅ローン残債の処理方法や売出し価格の決め方、売却損が出た時の特例制度など徹底解説~

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