ある程度の年齢になり、自分の親も高齢になってくると、相続のことを考えなければいけません。
両親が心身共に健康であれば早急の問題ではないのですが、場合によっては高齢者特有の疾病などで、意思疎通が難しくなってしまうこともあるでしょう。
そうなると親が亡くなった時に、残された親族で相続をどうするのかとトラブルになるケースが多くなります。
そこで親の生前に親名義のマンションなどの不動産を売却し、財産を相続した際に公平に分割するにはどうしたらいいのか。
その3つの方法をお伝えします。
親の委任を受けて売却を行う
まず最もポピュラーな手段が親の代理として子供がマンションなどの不動産を売却することです。
委任状という形で本人の意向を確認する書面があれば、親が高齢で不動産会社や売買の場に赴くことができない、判断力を失っていても売却が可能になっています。
委任状での代理売買は、代理行動において「任意代理」と呼ばれます。
委任状の書面においては、誰が誰に何を委任し、どの不動産を売却するのかを明確に記す必要があります。
委任もれっきとした法律上の契約ですから、その点においては厳密な正しい表記が求められるものになっています。書類としては名義人の実印、印鑑証明、身分証明書、住民票といった書類が必要になります。
また買う側としては委任状での売却とはいえ、子供と不動産売買業者が共謀し、名義人の意にそぐわない売却を行っているという疑いや懸念を持つこともあります。
そのような疑いを持たれないようにするには、委任状の名義を弁護士を代理人にするという方法もあります。信用度も高まりますし、司法書士から行われる本人確認もスムーズに行われます。
買主は名義人である親が売却の意思がなかったと確認できれば、売買契約の取り消しが可能ですので、親に無断で委任状を作成し、売却をするということは不可能です。
成年後見人として売却する
親が認知症、精神障害など一人での生活が困難になった場合には、その人を守るために、子供や親類など4親等以内の親族を成年後見人、親を成年被後見人として、親の生活の貢献的な活動を行う事ができます。
成年後見人は家庭裁判所の認定により決めることが可能になり、成年後見人として、被後見人の代理の法律活動を行うことも可能です。これは「法定代理」と呼ばれる行為になります。
つまり成年後見人は被後見人の親の代理として、不動産の売却を自分で進めることが可能になるのです。
ただし当然ですが、その不動産の売却も被後見人のためになる行動でなければいけません。不動産を売却して得られたお金の用途も制限されており、後見人が自分のために使用することはできません。
親の介護や入居施設の費用、また医療費などの用途で使わなければいけません。さらに親が住む家を売却するときには家庭裁判所に「居住用不動産処分許可」を申し立てしなければいけません。
成年後見人制度を悪用した、不動産売却などが過去に発生していたため、最近では成年後見人の行動も厳しく監視されるようになっています。
必要な書類としては申立書、名義人の診断書、健康状態が分かる資料、不動産の資料、戸籍謄本、また名義人と後見人の住民票が必要となってきます。
贈与を受けて不動産を売却する
親のマンションなどを売却するには、親が生前に子供に財産を贈与して、その贈与を受けた不動産を子供が自分の名義で売却をするという方法もあります。親の判断力がしっかりとしていれば、これが最も問題が発生しにくい方法と言えるでしょう。
ただし、例えば、相続人が複数おり、認知症の可能性がある親に無理やり書類に署名させ、長男が独断で生前贈与を受けられるように仕向けた場合には、遺族の間で問題になる可能性が非常に高くなります。あくまでも親の判断力がしっかりとしている状態で行うようにしましょう。
また生前贈与は相続税に比べて税率が高くなっています。
非課税枠として年間110万円までは非課税であり、また孫の教育資金の用途に限れば1500万円までを非課税で贈与することは可能です。
さらに60歳以上の親や祖父母から20歳以上の子や孫への贈与では2500万円までが非課税になりますが、年間110万円の非課税枠が使用できなくなり、親が亡くなったあとの相続時にもこれまで贈与を受けた分が加算されるので、相続時に課税される可能性が高くなります。
その他には住宅用資金の贈与であれば、建てる住宅の種類にもよりますが最大で2000万円以上を非課税枠として贈与できます。
これらの非課税枠をうまく利用して、無駄なく子供に不動産を贈与し、子供がそれを売却して生前にお金に替えてておくこともできます。
まとめ
相続でそれまで仲が良かった兄弟や親類にトラブルが起こり、関係が悪くなってしまうことは不幸なことによくあります。
そのような悲劇を防ぐためにも、そして公平に遺産を分配相続するために、親が元気で判断力のあるうちに、公平に分割しづらいマンションなどの不動産を現金化することを検討してはいかがでしょうか。