土地売買はどのような流れで行われる?土地の査定から引き渡しまで
多くの人にとって土地の売却は初めてであり、どういった手順を踏むことになるのかがわからず不安という人もいるのではないでしょうか。
この章では土地を売りたいと考えたときから買主の手に渡るまでを、大きく4つの段階に分けて解説します。
1.土地の査定をしてもらい、不動産会社と媒介契約を結ぶ
まず土地を手放したいと考えたら、不動産会社に査定を依頼しましょう。
ここで出る査定額は「その不動産会社に仲介を依頼した場合どのくらいの金額で売れそうか」というものです。不動産会社によって金額が異なることもあるので、インターネットの一括査定サイトなども上手に利用しながら、できるだけ複数の業者に査定してもらうことが大切です。
査定金額に納得して仲介を依頼する不動産会社が決まったら「媒介契約」を結びます。
媒介契約には3種類あり、一度に複数の不動産会社と契約したいし自分でも買手を探したい場合は「一般媒介」、信頼のある1社に任せたいけど知り合いの中から買手が見つかるかもしれないという場合は「専任媒介」、1社だけに依頼したい場合は「専属専任媒介」を選びます。
2.売出価格を決めて販売開始
不動産会社と媒介契約を結んだら、査定金額を元に募集条件を決めます。基本的には売主の希望の金額で募集できますが、あまり高値に設定してしまうとそもそも検討候補に入れてもらえないこともあります。
また購入希望者から値下げ交渉があることも多いため、そこを見越して少し上乗せした金額で募集にかけるというのも作戦の一つです。募集条件は買手が決まるまで何度も見直して不動産会社と相談しながら随時更新するようにしたり、自分の土地だけを見ず周辺の相場や競合をチェックしたりするのも大切です。同時に意識して欲しいのが土地のメンテナンス。
購入希望者が現れて現地を視察に行った際に、雑草が生い茂っていたりゴミが捨てられていたりすると印象がよくありません。
定期的に足を運んで最低限のメンテナンスをするか、遠方の場合は不動産会社に相談してみるのがおすすめです。
3.売買契約書を作成し契約する
売主と買主との間で契約条件に合意したら、契約に必要な書類を準備します。
これは不動産会社と媒介契約を結んでいれば不動産会社がすべて作成してくれるので、心配ありません。
売買契約書は書かれている内容が非常に複雑な上に分量も多く、契約日当日に全てに目を通すのは困難です。
そのため通常は契約日(署名や捺印をする日)の何日か前に、売買契約書や重要事項説明書(不動産会社が買主に対して契約内容を説明したことを証明する書類)の写しをもらい、あらかじめ内容に目を通しておくようにします。
契約内容に不安を覚えたり、記載事項に間違いがあったりしてはいけないので、疑問に思うことや理解が難しいことは不動産会社に確認しておきましょう。
契約日当日は宅地建物取引士による契約条件の確認と各種書類への署名捺印が行われ、さらに買主は売主に対する手付金(次の章で詳しく解説)を支払うことになります。
4.代金受け取り後に土地の引き渡し
契約が終了したら、売買契約書で取り決めた日に売主から買主へ土地を引き渡します。
この際に買主は売主に対して、契約時に支払った手付金を除いた残りの売買代金を支払います。土地の引き渡しと同時に所有権が旧所有者(売主)から新所有者(買主)に移転することになりますが、土地の登記簿上の所有権移転登記は司法書士が行うのが一般的です。
売買契約の取引としてはこれで終了ですが、売主は取引により売却益が発生した場合、翌年の2月から3月にかけて確定申告をすることになります。
その際に一連の取引で取得した領収書や契約書等が必要になるため、書類は大切に保管しておくようにしましょう。
土地売買契約書でチェックしておくべき2つのポイント
非常に分量が多く内容も複雑な土地の売買契約書ですが、難しいからといって内容の確認をおろそかにすると、後に思いもよらないトラブルに発展することもあります。
そのため契約前にあらかじめしっかりと目を通し、疑問や不安を解消しておく必要があります。大きな金額が動くことになる売買契約において、特に入念に確認・理解しておくべきポイントを2点解説していきます。
万が一契約書の内容で理解が難しい部分があれば、不動産会社の担当者や依頼した司法書士などに積極的に質問して疑問を解消しておきましょう。
1.契約書記載の面積と売買金額の算出方法が特に重要
土地の売買代金の算出方法には、土地の登記簿に記載された表示面積から売買代金を算出する「公募売買」というものと、実際に測定した土地面積から算出する「実測売買」という2種類があります。
土地面積の測定は専門家へ依頼による費用が発生するため、「公募売買」を用いて取引するのが一般的です。
しかしながら公募売買の場合は、法務局に保管されている登記記録や地積測量図を使用し実際の測量を行わないため、登記簿上に記載されている土地面積と実際の土地面積との間に大きな相違があった場合に、トラブルへと発展する場合もあるのです。
そのため土地の売買を行う際は、売主と買主の双方が公募売買であることを認識していることを確認した上で、契約書状に公募売買であることの明確な記載があるか、登記簿上の土地面積と実際の土地面積に大きな開きがないかを確認しておくことが重要です。
2.手付金の支払い条件も確認
売買契約時に買主から売主に支払うお金のことを「手付金」といい、大きく分けて3つの意味合いを持ちます。「証約手付」としては、買主は手付金を支払うことで土地を購入する意思を示し、また売主も受け取ることで売り渡すことを約束する、「契約が成立した証拠」という性格を持ちます。
「解約手付」としての性格は、買主は手付金を放棄することで、売主は手付金の2倍の金額を買主に支払うことで契約を解除できるというものです。そして「違約手付」は債務不履行が発生した場合の違約金としての性格を持ち、買主側に債務不履行があった場合は手付金がそのまま違約金として売主側のものになり、売主側に債務不履行があった場合は手付金の返金と合わせて同額の違約金を支払うことになります。
売買契約が成立し手付金の支払いも済むと、契約を解除したいと申し出た側が手付金相当分を負担することになります。
手付金に関する条件や支払い方法についても契約書に記載されているものなので、あらかじめしっかりと確認しておくようにしましょう。
土地売却後には確定申告が必要になる場合とは?
全ての契約と引き渡しが終了したので全て完了、とはならないのが土地の売却です。忘れてはいけないのは土地を売却した翌年の2月16日から3月15日までの間に手続きをする必要がある「確定申告」。
これを怠ると、あとで思った以上に損をしてしまうこともあるということをご存知でしょうか。
この章では土地を売却した際に確定申告が必要になる場合と、申告時に必要な書類・税額の計算方法について解説していきます。
譲渡所得が発生したら確定申告が必要
土地を売却した翌年に確定申告が必要になるのは、売買によって「売却益」が発生した場合で、所得税と住民税が課税されることになっています。
普段法人に勤めている人は給与所得に関しての確定申告を会社がしていますが、土地の売却で出た利益の申告手続きは自分でする必要があるため注意が必要です。
一方で土地の売却により譲渡所得がマイナスになった場合は確定申告の義務はありません。しかしながら税金が戻る還付申告の対象でもあるので、利益が出なかった場合でも確定申告をしたほうがいいということを覚えておきましょう。
確定申告時に必要な書類
土地の売却益についての確定申告をする際、税務署や国税庁のホームページで取得できる申告書の他に、あらかじめ準備しておくものが大きく分けて3つあります。
1つ目は「契約書」で、売却した土地を購入したときの売買契約書の写しと、土地を売却した時の売買契約書の写しです。
2つ目は土地を購入・売却した際の「領収書」で、不動産会社に支払った仲介手数料や登記費用、固定資産税の精算書などもこれに該当します。
そして3つ目は売却した土地の「登記事項証明書」で、法務局に出向いて取得する必要があります。
譲渡所得税の計算方法
確定申告書に記載する譲渡所得税は自分で計算する必要がありますが、慣れない用語や計算方法に戸惑う人も多くいます。
まず「譲渡所得」とは、「土地を売却した際に得た収入(譲渡収入金額)」から、「売却するためにかかった費用(譲渡費用)」と「土地を取得・購入した際にかかった費用(取得費用)」を引いた額を指します。
そして譲渡所得税はその譲渡所得に、所有期間に応じた税率をかけることにより計算します。譲渡所得税の税率は、土地を売却した年の1月1日時点において所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」とみなされ税率が高めになり、所有期間が5年を超えている場合は「長期譲渡所得」とみなされ税率が低くなります。
この計算を正しくするためにも、土地購入・売却時の契約書や領収書などの書類が必要になるのです。
なお購入時の価格や諸経費が不明な場合、売却時の価格×5%として計算することで、概算取得費とできるということも覚えておきましょう。
譲渡所得税の確定申告をしないと損をする
土地を売却して譲渡所得が発生したにもかかわらず確定申告をしなかったり、あるいは納税を免れようと申告せずにいたりすると、2種類の罰金を支払わなければならないことになります。1つは期限内に確定申告をしなかったことに対する「無申告加算税」、もう1つは税金の納付が遅れたことに対する「延滞税」です。税金を支払いたくないと無申告でいると逆に大きく損をしてしまうことになります。
前述の通り申告時には書類をいくつも揃えることになるので、土地を売却した翌年はできるだけ早く確定申告に向けての準備を始めるようにしましょう。