多くの人にとって土地の売買は未経験のことが多く、特に売買契約書には馴染みがないという人が大半です。
そこで本記事では土地を売るときに交わす売買契約書について説明します。売買契約書は、売買の内容を細かく決めるとても大切な書類です。お金の計算方法や払う時期、契約を解除するときのルールなど、トラブルを防ぐためにチェックしておくべきポイントがたくさんあります。
契約書の中でも特に重要ポイント3つ「面積の算出方法」「手付金」「契約解除条件」と、印紙代の負担、契約書は誰に作ってもらうのがいいのかを解説します。
土地売買契約書に記載されていることと特に大事な3項目
土地売買契約書の内容は、宅地建物取引業法により記載すべき事項が定められています。
土地売買契約書に記載されている代表的な項目
- 物件の表示(地番や所在地、面積等)
- 売買代金
- 手付金の金額
- 物件を引き渡す条件
- 売買の対象になる土地に万が一何らかの問題が発生したときにどのように対処するか
- どのような場合に契約解除の対象となるか
土地売買契約書に記載されている事項の中でも、特に着目しておくべき3項目について解説していきます。
- 面積の算出方法
- 手付金の額・支払い条件
- 契約解除に関する事項
1. 面積の算出方法
土地の売買における売買代金は、用いる面積の種類によって2種類の算出方法があります。1つは「公募売買」というもので、土地の登記簿に記載された表示面積より算出します。
この方法では売買の際に実際の測量は行わず、法務局で保管されている登記記録・地積測量図を使用するのが特徴です。もう1つは「実測売買」と呼ばれ、契約前に実際に測定した土地面積から売買代金を算出します。
「実測売買」の場合、測定は専門家に依頼する必要があり費用がかかることもあり、一般的には「公募売買」にて取引が行われます。ところが登記簿上の土地面積と実際の土地面積に大きな開きがあった場合にトラブルに発展するケースも否定できません。
土地の面積については、次の記事も併せてご覧ください。
そのため契約書の内容を確認する際は、土地面積の算出方法がしっかりと明記されているかどうかを確認しておく必要があります。
2. 手付金の額・支払い条件
土地の売買契約を結ぶ際、買主から売主に売買代金の一部を支払います。これを「手付金」といい、大きく分けて3つの意味合いを持っています。
1つ目は「証約手付」です。これは契約成立を示すもので、買主は手付金を支払うことで「購入します」という意思を、売主は受け取ることで「あなたに売ります」という意思を示すものです。
2つ目は「解約手付」で、契約締結から土地の引き渡しまでの間にやっぱり契約を解除したいと申し出る際に意味を持ちます。買主が契約を解除したい場合は売主に支払った手付金を放棄し、売主が契約を解除したい場合は買主から受け取った手付金の2倍の金額を支払います。
そして3つ目は「違約手付」です。これは売主または買主に債務不履行があった場合に違約金としてみなされるもので、買主に債務不履行があった時は手付金がそのまま違約金に、売主に債務不履行があった場合は手付金の返金に加えて同額の違約金を支払うということになります。
こういった手付金の支払い条件と金額については売買契約書に明記することが求められるため、しっかりと内容を確認しておくようにしましょう。手付金については詳しく知りたい方は次の記事も併せてご覧ください。
3. 契約解除に関する事項
無事に契約を締結したとしても、土地を引き渡し、またそのあと一定期間を経過するまでは安心できないのが土地の売買契約です。
引き渡し前の土地に何か問題が起きた場合や、引き渡した後に問題が発覚・使用できないことが判明した場合を想定し、土地売買契約書には「契約解除に関する事項」の記載があります。
例えば契約締結してから引き渡しまでの間に、台風や洪水・地震などの自然災害が起きたことにより土地が深刻な被害を受け、引き渡しができなくなる場合があります。
そのような時にどのような対応を取るか双方で取り決めておくのが「危険負担」の項目です。また「瑕疵担保責任」という項目は、2020年4月に「契約不適合責任による解除」へと名称が変わり、土地に重大な瑕疵(崩落の危険性があるなど)があるにもかかわらず、売主が事実を買主に伝えていなかった場合について定めています。
例えば買主が「家を建てる」目的で土地を購入したにもかかわらず、引渡しの後に崩落の危険性という重大な瑕疵が発覚した場合、買主は当初の目的を達成できないことを理由に契約を解除できるだけでなく、売主に対する損害賠償請求もできる場合もあります。
土地売買契約書の印紙代は誰が負担していくらかかるのか
土地売買契約書と切っても切り離せないのが「印紙税」です。収入印紙は印紙税法において定められた「課税文書」への貼り付けが義務付けられているもので、土地売買契約書においては、取引金額に応じた印紙を購入して貼り付け、その上に消印をすることで国に税金を納めます。
収入印紙の貼り付けが義務付けられている書類は限られているため、日常生活でなかなか目にする機会がないという人も多いのではないでしょうか。しかしながら契約書における収入印紙は、貼り付けを怠ると思いもよらない痛手を負ってしまうケースもあるのです。
特に個人間取引では見落としがちです。収入印紙の基本的な知識として、次の3点をおさえておきましょう。
1. 印紙代は売主と買主の両方が負担する
土地売買契約書における印紙代は、厳密には誰が支払うかは法律では定められていませんが、一般的には「売主と買主が平等に負担する」とされています。そのため、通常土地売買契約書は売主と買主がそれぞれ保有できるように2部作成しますが、各自が保有する契約書の分の印紙代を各自が負担する、というのが通例となっています。
個人間取引で契約書の作成も自分たちで行う場合は、郵便局や法務局等で印紙を購入する必要がありますが、不動産会社が仲介に入る場合は不動産会社が用意してくれることがほとんどなので、売主と買主は印紙代を支払うだけで大丈夫です。
2. 印紙代は取引金額によって変わる
印紙代の金額は、売買契約書に記載されている取引金額によって異なります。
土地売買の場合、取引金額が50万円超〜100万円以下であれば500円、100万円超〜500万円以下であれば1,000円、500万円超〜1,000円以下であれば5,000円で、取引金額がさらに高額になれば印紙代も高額になります。
なお、上記の金額は2014年4月1日〜2024年3月31日までの間に作成されるものを対象とした、不動産売買契約書の印紙税の軽減措置を参考に計算しています。個人間取引などで印紙の金額に不安がある場合は、税理士や税務署に確認してから購入してください。
3. 印紙なしでも契約は有効だが税法違反になるので注意
貼り付けと消印が義務付けられている印紙ですが、もし売買契約書への貼り付けを忘れてしまったり怠ったりした場合はどうなるのでしょうか。
実は例え印紙を貼っていない・消印が押されていない場合でも、契約書としての効力には影響はありません。しかしながら、印紙を貼っていない・消印が押されていない・印紙の金額の不足が明らかになった場合は税法違反になってしまい、「過怠税」として本来必要だった印紙代の3倍の金額の支払いを求められます。
ちなみに本来必要な金額より高い印紙を貼り付けてしまった場合は、税務署へ申告することで還付という形で戻ってきます。間違えないのが一番ですが念のため覚えておきましょう。
土地売買契約書は誰が作成するもの?トラブル防止のためにもプロに任せよう
パターン1. 不動産会社の宅地建物取引士
土地を売却・購入する際に、多くの人が不動産会社に仲介を依頼することになります。そのため、不動産会社の宅地建物取引士が売買契約書を作成することが一般的です。
その場合不動産会社は土地の売手や買手を探すだけでなく、双方の契約締結と引き渡しまでの手続きの手助けをしてくれ、売買契約書をはじめとする書類の作成もそのうちに含まれます。
土地売買契約書の作成は宅地建物取引士でも間違えることがあるほど量が多く、内容も複雑です。契約時だけでなく、契約から引き渡し後に重大な問題が起きた際の取り決めなどをする必要があります。
そして不動産会社は土地売買契約書作成以外の場面でも、交渉したり要望を伝えたりするときの橋渡しにもなってくれるので、安心して取引を進めるためにも上手に活用しましょう。
パターン2. 個人
不動産会社に仲介を依頼する場合は仲介手数料の支払いが発生してしまうため、少しでも費用を抑えたい場合は個人間取引も可能です。
個人間取引は親戚や友人という顔見知りとのやりとりになることが多いですが、必ず土地売買契約書を作成しましょう。民法上では「売ります」「買います」といった口約束でも契約は成立すると定め得られています。しかし何か重大なトラブルが発生したときに、契約書で明確な取り決めをしておくことで、深刻な問題へと発展してしまうリスクを防げます。
パターン3. 司法書士
非常に大きなお金を受け渡すため、契約書の内容はしっかり固めておくことが大切です。将来的なトラブルを避けるためにも、個人間取引の場合は司法書士など専門家の手を借りましょう。
土地が売主から買主に渡ると、土地の登記簿上の所有権も移転するため、法務局での所有権移転登記の手続きなども必要です。契約書作成以外の部分を踏まえても、全ての書類作成や手続きを個人で行うのはとても難易度が高いです。
土地売買契約書はとても難解!困ったら専門家に相談しよう
本記事では主に土地売買契約書の作成と確認すべき項目、そして印紙について解説してきました。
実際に不動産取引をしてみると、想像以上に契約書上でしっかりとした取り決めをすることの重要性を感じられると思います。
不動産会社が仲介に入る場合は一連のサポートをしてもらえますが、個人間で完結しようとした場合は当事者だけで取りまとめるのは難しいと感じる場面も多いでしょう。なぜなら土地売買の取引においては契約書の作成以外にも、登記や金銭の授受等、重要な手続きがたくさんあります。
不要なトラブルを避けて安心して取引を終えるためにも、疑問点は仲介を依頼した不動産会社にしっかりと確認し、個人間取引の場合は少しでも不安を感じたらぜひ専門家の手を借りることも検討してみましょう。