住宅の性能評価制度をご存知ですか?住宅の品質向上を目的として国土交通省が定めている制度です。
今回は、代表的な「住宅性能表示制度」と「長期優良住宅制度」について、2024年の税制改正も踏まえて、それぞれの制度の概要やメリットを紹介したいと思います。
税金優遇や地震保険の割引きなどお得な特典もある制度なので、ぜひチェックしてみてください。
住宅性能表示制度の概要とメリット
住宅性能表示制度とは、2000年4月1日に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(略して品確法とよばれれています)に基づき、 質の良い住宅を安心して取得できるようにすることを目的にスタートした制度のことをいいます。
2022年11月7日に「日本住宅性能表示基準」及び「評価方法基準」を改正し、公布されました。高い省エネルギー性能を持つ住宅を普及させるために、断熱性能とエネルギー消費量の評価等級が2つ追加されました。詳しく知りたい方は、国土交通省が公開している概要資料も併せてご覧ください。
〈主な評価基準〉
- 耐震性を中心とした建物構造の強さ
- 火災に対する安全性
- コンクリートや鉄骨などの劣化に対する耐性
- 各設備の維持管理のしやすさ
- 省エネルギー対策
- シックハウス対策・換気
- 窓の面積
- 遮音対策
- 高齢者や障がい者への配慮
- 防犯対策
以上10分野を等級で評価します。
〈主なメリット〉
- 2026年末までに住宅資金を贈与される場合の非課税枠が一般住宅は500万円、良質な住宅は1000万円に拡大(国土交通省サイト 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置)※1
- 建物の耐震等級に応じて、地震保険料を10%〜50%割引き(2021年の地震保険基準料率表)
- 請負契約、売買契約に伴うトラブル時に1万円で紛争処理機関を利用可能
など
※1 「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」は2024年の税法改正により、適用期限を2023年年末から3年間延長し、2026年年末までとなった。
地震保険料の割引き
上記メリットの中でも1番関心の高い地震保険料の割引きについて簡単に説明します。
地震保険料の割引き率は大きく3段階に分かれており、耐震等級によって違います。
〈耐震等級と地震保険料の割引率〉
耐震等級1 | 割引率10% |
耐震等級2 | 割引率30% |
耐震等級3 | 割引率50% |
〈耐震等級の定義〉
耐震等級1 | 数百年に一度程度発生する大地震でも倒壊、崩壊しない |
耐震等級2 | 等級1の1.25倍の地震でも倒壊、崩壊しない |
耐震等級3 | 等級1の1.50倍の地震でも倒壊、崩壊しない |
なお、地震保険は火災保険の付帯保険であって、単独で加入することはできないので注意が必要です。
長期優良住宅制度の概要とメリット
長期優良住宅制度とは、住宅を長期使用することにより、住宅の解体に伴う余分な廃棄物の発生を抑制して、環境への負荷低減を目的とされた制度のことをいいます。
〈主な評価基準〉
- 耐震性を中心とした建物構造の強さ
- コンクリートや鉄骨などの劣化に対する耐性
- 省エネルギー対策
- 各設備の維持管理のしやすさ
- 住戸の広さ
- 間取りの変更のしやすさ
など
〈主なメリット〉
- 2025年末までに入居した場合、最大13年間、住宅ローン残高の0.7%が所得税から控除
- 一般の住宅の住宅ローン限度額は3,000万円
- 長期優良住宅の住宅ローン限度額は、2023年末までに入居すると5,000万円、2024年~2025年末入居した場合は4,500万円
- 自己資金だけで住宅を購入した場合、性能強化に伴う費用の10%を消費税から控除(国土交通省サイト投資型減税)
- 住宅ローンの金利が一定期間引き下げられる(住宅金融支援機構サイト フラット35)
など
日本の新築重視による住宅の短いライフサイクルから、少しでも長く住宅を利用してもらうように政府も力を入れていますが、この長期優良住宅制度がその突破口となるか注目です。
費用対効果を見極めることが重要
ご紹介したように性能評価制度は、税金の優遇や保険料の割引きなどのメリットはあるものの、費用対効果を見極めることが大事です。住宅性能表示も長期優良住宅も、それぞれ条件を満たすためには相応の費用がかかります。
現在の分譲マンションは性能評価制度を満たしたものがほとんどで価格に織り込まれています。しかしハウスメーカーや工務店などに依頼して建物を建築する場合は、当初の予算を大幅に上回るケースもありますので、しっかりと熟慮した上で、この制度を利用するか検討する必要があります。