重要事項説明書とは
「重要事項説明書」は不動産の売買契約・賃貸契約・委託契約を締結する前に、契約に関する重要事項が詳細に書かれている説明書です。
不動産売買の場合は、買主が購入する対象物件の「取引物件概要」「取引条件」について記載されています。買主は、重要事項の内容に納得してから契約を結びます。
重要事項説明書には不動産に関する専門用語が多く、知識不足から買主が理解しづらいことが一般的です。重要事項説明書をスムーズに理解できるよう、重要事項説明書の内容とチェックポイントについて紹介します。
重要事項には何を書いているか?①:「取引物件」に関する事項
【物件概要】
・対象物件の所在地・種類・構造・床面積:パンフレットと違いがないか
・登記簿に記載されている内容:抵当権抹消や「仮登記」になっていないか
【法令事項】
・用途地域:土地の用途により建物が建てられるか
・建ぺい率:土地に建てられる建物の高さや面積について
・私道について:敷地に面している私道についての権利関係や面積・位置、利用ときの負担金
【インフラ整備(戸建て・土地)】
・電気・ガス・水道などの供給や排水:供給施設や下水処理について確認
【建物や敷地の形状】
・建物の構造・仕様、敷地の形状:未完成の場合は完成予定を確認。中古物件などは付帯設備表と物件状況確認書で建物の現状を確認
【共有部分(マンション)】
・管理形態や委託先:管理会社の連絡先、管理規約について確認
・管理費、修繕積立金の説明:中古物件の場合、前所有者が管理費・修繕積立金を滞納していないか、大規模修繕工事の計画も合わせて確認
・共用部分の使用方法や範囲、専用使用権:駐車場が必要なときは空き状況や料金を確認
重要事項には何を書いているか?②:「取引条件」に関する事項
【必要経費】
・手付金など:物件代金以外に必要な経費(収入印紙や手数料など)
【契約解除】
・手付解除:契約解除は、買主は手付の放棄・売主は手付の倍返しなどで可能になる場合がある
・契約違反解除:期日までに売主が引き渡さない、期日までに買主が代金を支払わないなど。契約解除の申し立てができ、双方ともに違約金(売買代金の20%以内)を請求できる場合がある。新築マンションはオプションの分についてもチェック
・ローン特約解除:予定していた住宅ローンが利用できなくなったときは、ペナルティなしに契約を解除できるかどうか記載されているか確認
※ローン利用の際は、利用金融機関名や借入・返済内容について明記されているか確認
【保険加入・供託】
・供託所、瑕疵(かし)担保責任の履行:住宅基本構造部分に瑕疵が見つかった場合、売主や建築会社に問題が起きたときのために備えてある供託金の還付や保険金を受けられるか確認
重要事項には何を書いているか?③:その他事項について
その他事項は、買主に承認してもらうための事項です。あらかじめ、売主から対象物件についての不具合やトラブルを申告してもらい、買主に承認してもらいます。
(設備の不具合):生活設備に関しての申告
・ガスコンロに点火しない箇所がある
・給湯器が故障している
・トイレのウォシュレットが故障している
・窓ガラスが割れている、網戸の開閉に不具合がある など
(周辺環境):生活環境に関しての申告
・近隣トラブルがあったか(ペットや騒音など)
・対象物件周辺の環境に変化があるか(高層マンション建設予定、墓地や火葬場、ゴミ処理場の建設予定など)
・自殺者や死亡者があった物件か など
事前に売主が申告し、引き渡し後のトラブルを防ぎます。重要事項説明で買主の了承を得られれば、売主が問題に対応する必要はありませんが、その分売却価格値引きの対象材料になるケースが多いです。
重要事項説明書の役割は、買主の保護!
重要事項説明は、買主を保護することを目的としています。
不動産売買は、条件や権利関係が複雑であり、取引が高額になるため、買主が不利にならないよう契約前に物件詳細・取引条件を説明します。
買主が購入予定物件の情報を正しく理解するために必要な役割を担っています。契約前に重要事項説明を怠った場合は、担当の不動産会社が違反として処分を受けることになります。
買主も重要事項説明をしっかり受け、内容を理解したうえで売買契約にのぞみましょう。
重要事項説明書と売買契約書との違い
重要事項の説明は、不動産の売買契約と同時に行われます。
重要事項説明書と売買契約書は手続き上、署名・捺印することは同じですが、目的と意味合いが違います。重要事項説明書は、購入予定者に物件概要や取引条件を理解させ、買主のために作成されているのが目的です。署名や捺印は説明を受けたことの証、内容を理解し納得したという意味合いになります。
売買契約書は、契約を成立させることが目的です。契約書の署名・捺印は、重要事項説明を受け、物件や取引内容を理解し、契約を成立させる意味合いです。
双方記載事項の内容も異なります。署名・捺印の順番は、1. 重要事項説明書、2. 売買契約書となりますから注意しましょう。
重要事項説明は、売買契約を成立させるために重要な判断材料になります。
重要事項説明書の説明のタイミングは?
宅地建物取引業法では「宅地建物取引士」が、買主に重要事項説明を行わなければならないと定められています。
重要事項についての説明のタイミングは、売買契約を成立させる前、売買契約書に署名・捺印する前に行います。重要事項説明書の交付も義務付けられています。
宅地建物取引士が、重要事項説明書を見ながら内容を読み上げて説明していきます。専門的な不動産用語も多くボリュームもあるため、買主が説明と同時に内容を理解することは難しいかもしれません。
事前に、重要事項説明書に記載されている内容をチェックリストなどにまとめて説明を受けると、内容が把握しやすくなります。
重要事項説明は「宅地建物取引士」によって行われなければならない
重要事項説明は、国家資格者である「宅地建物取引士」によって行われ、資格証を提示して説明することが義務付けられています。
また、重要事項説明書も宅地建物取引士によって作成されます。また、宅地建物取引士は、合わせて売買契約も作成します。
宅地建物取引士は、宅地建物取引業法で定められている国家資格であり、不動産に関する専門知識を持ち合わせています。公正・円滑に不動産取引を進め、不動産取引法務のプロフェッショナルです。
不動産業者(宅地建物取引業者)には、必ず資格者が存在します。不動産取引で重要事項説明を受ける際は、資格保持者であるかどうか確認しましょう。
ルール違反を犯した場合は、一定の処分を受けることになります。
重要事項説明書が不要なケース
不動産売買には重要事項説明が必要ですが、売主と買主の取引関係や仲介業者が存在するか、しないかで重要事項説明が不要なケース、宅建業者は不動産のプロなので、調査を自ら行えるので省略できるケースがあります。
【重要事項説明の義務なし】
1)売主が個人、買主が宅建業者→仲介業者なし
2)売主が個人、買主も個人→仲介業者なし
【重要事項説明は省略できるが、重要事項説明書の交付が必要】
1)売主が個人 買主が宅建業者→仲介あり
2)売主が宅建業者、買主が宅建業者→仲介あり
一般的な不動産売買には重要事項の説明と重要事項説明書の交付が義務付けられています。
【重要事項説明が必要】
1)売主が個人 買主が個人→仲介あり
2)売主が宅建業者、買主が個人→必然的に宅建業者が仲介
重要事項説明書の内容を理解してから売買契約へ!
重要事項の説明は、不動産の売買契約を成立させる前に行われます。物件概要や取引条件が詳細に記載されており、契約成立への重要な判断材料になります。物件概要・取引条件の理解は最もですが、その他事項にも注目しましょう。
売主にしか分からない物件の注意点が記載されています。重要事項説明書は、専門的な不動産用語も多いので、項目ごとに分けたリスト作成しチェックしながら説明を受けると理解しやすくなります。
1. 基本:宅地建物取引士証確認・重要事項説明書の存在
2. 物件:所在・面積など
3. 権利:所有権や抵当権
4. 法令:建築基準法
5. 取引:住宅ローンなど
6. 管理:専有・共有部分について
不動産売買で後悔しないためにも、重要事項説明書を理解しましょう。