最近、地方のみならず首都圏でも社会問題となっている空き家の増加。
空き家問題は決して他人事ではなく、将来、あなたも空き家を相続する当事者となるかもしれません。
今回は、相続した空き家を売却する際にとても有効となる譲渡所得の特別控除制度について紹介したいと思います。
空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除制度とは?
はじめに制度の概要を説明したいと思います。
この制度の正式名称は、「空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)」といい、空き家の状態のまま放置されるのを防ぐ目的で、2016年4月からスタートした新しい制度です。
内容は、
「相続日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日までに、被相続人の居住の用に供していた家屋を相続した相続人が、当該家屋(耐震性のない場合は耐震リフォームをしたものに限り、その敷地を含む。)又は取壊し後の土地を譲渡した場合には、当該家屋又は土地の譲渡所得から3,000万円を特別控除する。(国土交通省HPより引用)」
というものです。
この説明だけだと分かり難いので、実際にこの制度を利用するとどれくらい税金がお得になるのか不動産売却所得(=譲渡所得)の計算式で説明したいと思います。
不動産譲渡所得の計算式は以下のようになります。
譲渡所得 = 譲渡価額 ― 取得費 ― 譲渡費用 ― 特別控除3,000万円
具体例として下記条件の不動産を売却するとします。
<売却不動産の条件>
・相続した家屋を解体して、解体後の更地を500万円で売却
・家屋は1980年に新築
・被相続人が20年間所有(譲渡所得の税率は20%)
・譲渡費用は200万円
・取得費は不明(取得費が不明な場合は譲渡価額の5%で計算)
<特別控除を利用した場合>
(500万円 ― 500万円×5% ― 200万円 ― 3,000万円)× 20% = 税金は0円
<特別控除を利用しない場合>
(500万円 ― 500万円×5% ― 200万円)× 20% = 税金は55万円
以上のように空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除を活用することによって、大幅な節税効果を期待できることが分かるかと思います。
3,000万円特別控除制度の利用要件とは?
では、実際にこの特別控除を利用するにはどうすればよいでしょうか。
残念ながら、「空き家を相続したら全て制度の対象になる」というわけではありません。
利用するためには大きく分けて次の3つの要件を満たす必要があります。
<相続発生日を起算点とした適用期間の要件>
・対象となる空き家が2013年1月2日以降に発生した相続であること
・相続が発生してから3年後の年末まで(2016年4月1日から2019年12月31日までの期間内)に売却しなければならない
<相続した家屋の要件>
・相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていたものであること
・相続の開始の直前において当該被相続人以外に居住をしていた者がいなかったものであること
・1981年5月31日以前に建築された家屋(区分所有建築物を除く。)であること
・相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと
<譲渡する際の要件>
・譲渡価額が1億円以下であること
・家屋を譲渡する場合(その敷地の用に供されている土地等も併せて譲渡する場合も含む)当該譲渡時において、当該家屋が現行の耐震基準に適合するものであること
まずは不動産会社や税理士に相談してみましょう
今回は、相続した空き家を売却する時の3,000万円特別控除制度について紹介しました。
このコラムでは、あくまで制度の概要のみの説明に留めていますので、特別控除制度の利用を検討している方や詳細を知りたい方は、不動産会社や税理士に相談してみましょう。
国土交通省のHPにも詳細は記載されていますが、不動産取引に慣れていない一般の方が内容を把握するには少し難しい気がします。
税務署に提出する書類も複雑なものが多いので、不動産や税金のプロに相談することをおすすめします。