不動産の相続まるわかり!税金や手続きなど詳しく解説

相続発生時にまずやること

故人が亡くなると、悲しみが言えぬ間もなく対応しなければいけないことが多々あります。

なかでも、不動産の相続は高額かつ手続きなどが煩雑な点もありますので、つい後回しにしがちでしょう。

不動産の相続が発生した場合に、亡くなってから2週間~1か月の間でやらなければならない手続きについて、まずはみていきましょう。

14日以内に世帯主を変更

故人が世帯主である場合、14日以内に自治体へ世帯主変更届の提出が必要です。

提出しなかった場合、5万円以下の罰金が科されてしまうので注意してください。なお、故人が世帯主である場合でも、残された世帯員が1人となる場合(例えば、夫と妻の2人世帯で、夫が亡くなり妻が世帯主になるなど)には、この手続きは不要です。

1か月以内にライフラインの名義変更、ローンの金融機関へ連絡

電気やガス、水道、インターネット回線などのライフラインを個人名義で契約している場合には、解約するか名義変更の手続きが必要です。

契約者の銀行口座が凍結されてしまうと利用料金の引落しができず、未払いになりますので注意しましょう。

故人の家に誰も住まない場合は、解約が必要ですので、早めに各サービスの窓口へ連絡することをおすすめします。

不動産相続のために用意する書類はたくさんある

相続するために用意しなくてはならない書類は複数あります。

一つずつ揃えようとすると時間も労力もかかってしまいます。書類と部数を一覧化することで、効率的に書類を用意できます。

漏れがないように注意しながら進めていきましょう。
必要な書類は次の7つです。

■各市区町村の役場で揃えるもの
・被相続人の戸籍謄本
・被相続人の住民票の除票 (本籍省略不可 )
・相続人すべての戸籍謄本(家族全員が記載されているもの)
・相続人すべての住民票(家族全員が記載され、本籍省略不可)
・相続人すべての印鑑証明

非相続人(故人)の戸籍謄本は生まれてから亡くなるまですべての戸籍謄本が必要なため、1枚とは限りません。故人によって通数が異なりますので、本籍地の役所に相談してみてください。

■その他
・被相続人の死亡診断書のコピー
 →病院で作成してもらったものの写し
・遺言書または遺産分割協議書
 →遺言書がない場合には、遺産分割の調停を行い、遺産分割協議書を作成

相続までの流れ

相続をするためにはいくつかのステップを踏む必要があります。

特に相続税は、被相続人(故人)が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に申告し納税する必要があるため、ある程度スケジュールに余裕をもって進めていくことが重要です。

できることなら、相続が発生する前に全体像を把握しておくとスムーズに進められます。まずは相続までの基本的な流れを見ていきましょう。

遺言書の有無と故人の財産を確認する

初めに行うべきことは遺言書があるかどうかです。

遺言書には時効がありませんので、相続が終わった後に見つかった場合でも、相続をやり直す必要があります。できれば故人が他界する前に遺言書の有無を確認しておきましょう。

遺言書には3種類あり、「自筆遺言書」「秘密証書遺言書」「公正証書遺言書」です。自筆遺言書と秘密証書遺言書の場合、開封は家庭裁判所で行う必要があります。その場で勝手に開けてしまうと5万円以下の罰金が科せられますので注意してください。

また、故人の財産をすべてリスト化しましょう。財産は、預金や株、不動産といったプラスの財産だけではありません。

借金や住宅ローン、カードローンなどの負債や未払いの税金などのマイナスの財産もあります。見落としがないように相続人で確認しあい、注意しましょう。

法定相続人の範囲を確認する

次に相続手続きを行うためには、法定相続人の範囲を確認します。故人に配偶者がいる場合、相続開始時に配偶者(事実婚はNGです)であれば相続人になります。
配偶者以外の血族は、優先順位が高い人が相続人となります。第一順位がいる場合には、第二順位、第三順位の血族が相続人となることはできません。
・第一順位:子や孫など
・第二順位:両親や祖父母など
・第三順位:兄弟姉妹など

遺産分割協議書を作成する

遺言書がなく、相続人の範囲が整理できたら、遺産分割協議書を作成します。

書式に指定はなく相続人のだれかが作成することもできます。費用が掛からない代わりに、不備がある場合受理してもらえず多くの手間がかかることもありますので、心配な人は税理士や弁護士などの専門家に依頼するとよいでしょう。

遺産分割協議の内容をまとめたものが遺産分割協議書ですが、相続人全員が直接会うのが難しい場合には郵送でやりとりしても問題ありません。

ただし、作成後の変更は基本的にできませんので、相続人全員が合意する内容になるよう確認が必要です。

不動産登記申請をする

不動産の相続について整理ができたら「不動産登記申請」が必要です。この登記とは不動産の所有者を相続人に名義変更することを指します。

登記申請に期限はなく罰則もありませんが、ついつい先延ばしにしてしまうため、まとめて終わらせた方がよいでしょう。

相続登記を行わないと、いざ自分が亡くなった時に相続が複雑になってしまい、トラブルにもつながります。また、賃貸物件として活用する場合にも不都合が出てきますので、実態にあった名義にしておくことが大切です。

法務局へ所定の書類を提出することで不動産登記は完了しますが、法務局での手続きになれていない人や遺産分割協議書の作成を依頼した人は、そのまま専門家にお願いすることも多いです。

自身で行う場合には法務局へ事前に相談すると必要な書類など手続きについて教えてもらうこともできますので、費用を抑えられます。

相続にかかわる税金とは

不動産を相続すると2つの税金がかかります。

なかでも、「相続税」については耳にしたことがある人も多いでしょう。税金は身近ですが一生に数回しか経験しないものは特に詳細まで知っている人は少ないです。

ですが、事前に把握しておかないと後から慌てる原因となりますので、あらかじめ勉強し、備えておくことが大切です。

必ずかかる「登録免許税」

不動産登記申請をする際に必ずかかるのが「登記免許税」です。登記免許税を納めないと申請は却下されてしまいます。

土地の相続である場合、土地価額に対して0.4%の税率がかかりますが、2018年度(平成30年度)の税制改正により、条件を満たせば免除されるようになりました。

このように法改正や特例などにより免税や減税の対象となることもありますので、登記申請前に法務局などのホームページを見たり、電話で問い合わせたりすることがよいでしょう。

「相続税」はかからない場合もある

次に納付すべき税金は、「相続税」です。

「相続税が高くて困った」と言った会話を耳にすることもあるでしょう。しかし、登記免許税とは異なり、相続税はかからない場合もあります。

人によっては税額が高額になる場合もありますので、相続前にある程度把握しておくことが重要です。

相続税がかからない場合

相続する財産の金額が相続税の基礎控除額以内の場合には、相続税はかかりません。

基礎控除額は「3,000万円+600万円×相続人の人数」で求められますので、一番わかりやすい金額のボーダーラインは3,600万円です。

相続財産が3,600万円以下の場合には相続税の申告は不要となります。他にも、相続人が配偶者の場合は相続税1億6,000万円以下、法定相続分以下の相続税の場合にも相続税はかかりませんので、まずは相続する財産の金額を確認してみましょう。

相続税がかかる場合

上記に当てはまらない場合には、相続税がかかります。

この場合、「相続税申告」が必要となり、故人が亡くなった翌日から10か月以内に申告する必要がありますので、注意が必要です。

相続税は遺産総額は増えると増加していきます。また、相続人の人数が多いと相続税は少なくなります。

相続がすでに発生している場合には、具体的な相続税額の算出が必要となります。申請に必要な書類は専門性が高く、また、10か月以内に申告するといった期限もあるため、専門家に依頼したほうがよいでしょう。

相続した不動産の放置は厳禁!

相続の手続きを終えるとひと段落しますが、相続した不動産を何もせず放置しておくと損をしてしまうことをご存知でしょうか?

空き家で電気やガスも通っていないので一見損をすることはないように思えますが、そうではありません。

固定資産税は毎年払い続ける必要があります。

また、不動産価値は築年数の経過によって下がっていくものです。

特にマンションの場合、築年数が経過するほど価値が下がってしまいますので、自分で使うことのない不動産は、賃貸物件として貸し出すことや売却することを検討して、相続後に損することがないようにしておきましょう。

いざというときの不動産相続に備えておくことが大切

相続はまだ先だと思っていても、思わぬタイミングでやってくることもあります。

元気なうちに親や配偶者と相続について話す場を設けておくことも大切です。

全体的な流れを理解しているだけでも、いざというときの気持ちが変わってくるので、この機会に一度確認してみてはいかがでしょうか。