マンション売却時にかかる税金は5種類!
マンションを含む不動産を売却すると、さまざまな税金が発生するイメージがありますね。実際には、マンションの売却時にかかる税金は大きく分けて5種類しかないため、落ち着いて確認すれば決して難しくありません。
最も金額が大きな税金は、マンション売却時の利益に対して課税される譲渡所得税です。さらに2037年末までは、譲渡所得税の2.1%分の復興所得税も発生します。
売却手続きには印紙税と登録免許税がかかりますし、自己居住用ではなく投資目的で購入したマンションの売却には、消費税も必要です。
それぞれの税金の詳細について、順を追って見ていきましょう。
譲渡所得税がマンション売却価格に比例して発生
マンションの売却価格に比例して発生する税金が、譲渡所得税です。正確には譲渡所得税という税金はなく、マンション売却にかかる所得税と住民税の2種類の総称ですが、税率の計算と申告は所得税のみで済みます。ただし、納税時期が所得税はマンション売却翌年の2月から3月、住民税は「翌年度」6月と異なるので注意してください。
譲渡所得税の額はマンション売却による譲渡所得に比例しますが、購入費用や諸費用を引いた額になるため、売却金額と同一ではありません。譲渡所得に対する税率は所得税・住民税を合わせて5年以下の所有で39.63%、5年超で20.315%、10年超かつ6,000万円以下で14.21%です。
復興所得税はマンションを売却した年の所得に課される
復興所得税は正確には復興特別所得税と称します。2013年(平成25年)1月1日から2037年(令和19年)12月31日までの所得に対し、年ごとに課せられる税金です。税率こそ所得税の2.1%と少額ですが、そのため申告漏れになる可能性が高いので気を付けてください。また、計算方法もやや複雑です。
復興所得税の計算には、譲渡所得に所得税率をかけた基準所得税額を算出します。譲渡所得税と異なり、住民税は計算に含みません。たとえば譲渡所得が1,000万円で所有期間5年超の場合は所得税率が15.315%のため、課税所得税額は153.15万円です。2.1%をかけた3.21万円が復興所得税となります。
マンションの名義変更に登録免許税が必要
登録免許税もマンション売却で忘れてはいけない税金です。売却するマンション価格の2%分の税金を納める義務が発生します。なお、登録免許税は「譲渡所得」ではなく、売却するマンションの評価額に応じて課される税金です。評価額は固定資産税納付通知書か、市区町村役場で発行する評価証明書に記載されています。
また、登録免許税法上は売主と買主が折半で登録免許税を納付しますが、実際に税金を納付するのは買主のみであることが多いです。それでも、マンション売却の際に相手が税金を納付する必要があると認識してください。
印紙税も売却価格によって変動する
マンションなど不動産の取引の際に売買契約書などを作成するときに課税される、切手に似た収入印紙の購入で納付する税金を印紙税と呼びます。マンション売却では譲渡所得や評価額ではなく実際の売買金額が基準となり、1,000~120,000円ほどかかります。例えば物件の価格が1,000万円~5,000万円で2万円です。
※1 国税庁 No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書までを参考にしました。不動産売買契約書の印紙税の軽減措置(2024年4月1日から2027年3月31日までの間に作成される契約書が対象)の対象になる場合は、1,000万円~5,000万円の価格帯物件で10,000円です。
仮にマンション売却で消費税が課せられた場合も、印紙税は税抜き価格で算出します。また、売却者と購入者の双方が同額の印紙税を負担します。不動産会社等を介さず個人が自力でマンションを売却すれば印紙税は不要ですが、手続きが難しいため現実的ではありません。
投資目的でマンションを売却したら消費税もかかる
マンションを個人で居住する目的ではなく投資目的で購入し、後に売却した場合は、事業所得とみなされて消費税がかかります。ただし土地部分の売却代金は非課税ですし、2年前の不動産売買による課税売上高が1,000万円以下であれば消費税を納める必要はありません。
課税売上高は事業として売却したマンションの価格であり、仮に1,000万円で売却すると、費用などを引かない1,000万円全額が税金計算の対象です。なお、居住目的で購入したマンションでも、売却のため不動産会社や司法書士に支払った報酬、住宅ローンの繰り上げ返済手数料には消費税が課されます。
税金の額はマンション売却により生じた利益で決まる
ここまで「マンション売却にかかる税金は譲渡所得によって決まる」と説明してきましたが、譲渡所得と売却金額はイコールではありません。たとえばマンションを5,000万円で売却できたとしても、5,000万円全額が譲渡所得になるとは限らないという意味です。
店舗が商品を仕入れて販売する場合は、利益は仕入れ額から費用や人件費を差し引いた額になりますね。マンション売却で生じる税金も、購入額から諸費用を引いた利益の額によって決まります。つまり利益がゼロ以下ならば税金はかかりませんし、減価償却によって見かけ上の利益を減らすことも可能です。
譲渡所得はマンション売却価格−購入額−諸費用
税金の対象となる譲渡所得を簡単に説明すると、マンション売却額から購入額と諸費用を引いた額になります。諸費用は不動産仲介業者に支払う手数料や抵当権抹消の手数料、印紙代などです。また、居住用マンションは3,000万円の特別控除が適用され、譲渡所得が少なくなります。
例として、5,000万円で購入したマンションを6,000万円で売却したと想定してください。利益は1,000万円ですが、諸費用が100万円かかったので譲渡所得は900万円となります。さらに自分で居住する目的のマンションなら特別控除3,000万円が適用され、譲渡所得は0円に下がります。
マンション売却で損したら税金はほとんど発生しない
この例では特別控除が適用されなければ900万円の譲渡所得に税金がかかりますが、仮にマンション売却で損失が出れば税金はほとんど必要ありません。たとえば、買ったとき5,000万円だったマンションが4,000万円に値下がりした場合などです。譲渡所得はゼロ以下ですから、譲渡所得税、復興所得税、消費税は課せられません。
また、売却した年の1月1日時点でマンション所有期間が5年を超えており、かつ住宅ローン残高が残っているか新たに10年以上のローンを組んで50m2以上の住宅を購入すると、他の所得と損益通算できる繰越控除を受けられます。ただし、マンション売却による利益がなくても登録免許税と印紙税は必要ですし、仲介手数料などもかかります。
減価償却によりマンションの購入額は年々下がっていく
事業に必要な金額が大きな資産を購入すると、「減価償却」といって購入代金を数年分に分割して毎年経費にできる制度があります。マンションも減価償却資産に該当し、見かけ上の購入額が毎年下がっていきます。ただし減価償却の対象になるマンションは居住用のみで、土地に対しても適用されません。
5,000万円で購入し10年経過した居住用マンションを売却する例を説明します。耐用年数47年から経過年数10年を引き、さらに経過年数10年×0.2を足します。耐用年数39年となり、国税庁の償却率表を参照すると0.026となるため、これに5,000万円をかけた130万円が購入額からの減価償却費です。
マンションを売却する際の手続きと税金の納付はどうする?
マンションの売却は一生に何度も行うものではないため、どのように手続きすればよいかわかりにくいのではないでしょうか。不動産の売却は、不動産会社に依頼して仲介してもらうのが一般的です。税金の納付は、マンション売却により利益と損失いずれが発生しても、確定申告を税務署に対して行う必要があります。
自分で確定申告を行うことが難しい場合は、税理士や確定申告相談会の協力を求めてください。
自力での売却も可能だが手間と時間がかかる
マンションなどの不動産は自分で買主を探して売却することで、税金と手数料を節約できます。法的な名義変更には登記簿を書き換える必要がありますが、法務局に書類を提出すれば可能です。ただし両者の戸籍謄本等が必要ですし、登記原因証明情報といった書類も自力で作成しなければなりません。
まず、どのようにマンションを売却する相手を探すかという問題がありますし、法務局に提出する書類も非常に複雑で、時間と知識がなければ作成は困難です。そのため、通常は不動産会社などに相談することとなります。
不動産会社や司法書士に相談しよう
スムーズなマンション売却には、不動産会社への相談が近道です。仲介手数料は法律で上限が定められており、おおむね売却金額の3%に6万円を足した額となります。マンションの売却価格が5,000万円なら、仲介手数料は156万円です。
知人にマンションを売却できるなど買主を探す必要がなければ、法務局への提出が必要な書類の作成を司法書士に依頼して売買手続きを完了させることもできます。報酬額に法的根拠はないものの、不動産会社への仲介手数料の半額以下であることがほとんどです。
マンション売却の税金は分離課税されることに注意!
通常の税金は総合課税で、一年間の所得を合算した額を基準に計算します。一方でマンションを含む不動産の売却による譲渡所得は分離課税となり、ほかの所得とは切り離されて税額が算出されます。個人事業で1,000万円の損失が出ても、マンション売却による1,000万円の利益の全額に税金がかかります。
ただし、マンション売却で損失が出ると損益通算の特別控除を受けられるため、ほかの所得を減額して税金計算を行うことが可能です。
大切なマンションを売却するなら税金の理解を深めよう
マンションの売却手続き、そして税金の計算はとても大変に感じられるかもしれません。しかし、事前に必要な情報を調べて不動産会社や買主との競技を重ねることで、トラブルなくスムーズに取引できます。
大切な思い出が詰まったマンションを売却して新生活を始め、納付額を最小限に留めるためにも、厭わずに税金の知識を身に付けることが重要です。