なぜ私道はトラブルが多い?2つの例を解説【2024年最新版】

不動産の売買取引において、私道の取り扱いでトラブルになるケースがあります。

私道は個人や法人が所有するため、様々な問題が起こります。

しかも1つの私道の所有者が1人とは限りません。複数人で共有していたり、私道を分割して複数人で所有していることもあります。後者の場合は、公道に出るまでに第三者所有の私道を通る必要があります。

本記事では、購入する不動産が私道に接しているときに注意すべきことを2つ解説します。また、2023年4月に施行された民法改正についても説明します。

私道は権利が複雑でややこしい

私たちが利用する道路は大きく「公道」と「私道」に分類されます。

公道については、国道、県道、市道かによって、各行政が所有しており、維持管理も同時に行なわれています。そのため一般的な不動産の売買取引で公道が理由でトラブルになるケースは多くありません。

一方で、私道に接する不動産を売買したり相続する場合、権利関係が複雑でややこしいために、トラブルに発展するケースがあります。

道路に関して定めている法律は複数存在しており、「道路法」、「民法」、「道路交通法」、「都市計画法」、「建築基準法」「地方税法」などがあります。しかし、これらの法律では一部矛盾している部分があります。

例えば、建築基準法では、「私道の所有者は、著しい不利益のない限り、日常の道路利用者の通行を妨害してはならない」と定められています。

普段から近道になるような細い抜け道(このような抜け道は私道の場合が多いです)などを通行している方は多いと思います。

しかし、民法の規定では、「土地を所有する権利は、私道を通行する権利にも適用される」と定められています。

建築基準法と民法では逆の事を言っているため、非常に混乱すると思います。これらの解釈としては、建築基準法の規定はあくまで建物を建てる上での規制を主の目的としているので、民法の規定の方が実態に則しています。

つまり、たまに見かける「私有の道路につき、関係者以外は通行禁止」などの看板のように通行人を制限することは法律的な観点からも可能なのです。

以上のように私道に関する法律はややこしく複雑なのですが、ここで問題となるのが、購入する不動産が公道でなく、私道に接していた場合です。

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購入する不動産が私道に接しているときに注意すべきこと

一般的に多いケースは、私道に接している不動産の所有者が私道をそれぞれの持分に応じて所有している場合です。新築の建売住宅のために、分譲会社が新設する道路などでよく見かけます。この場合は、不動産の広告などに必ず「別途私道負担部分〇〇㎡」と記載されており、道路の所有者として一部権利を得るという意味です。

逆に私道負担が無い条件で私道に接している不動産を購入する場合は注意が必要です。先ほど説明した通り、所有者の権利は私道にも及びます。

では、どういう時に私道トラブルが発生するのか2つ例を紹介します。

例1. 私道の工事で一時的に発生する損害に対して所有者へ償金を払う

2023年4月に施行された民法改正で、ライフライン設置権とライフライン使用権が規定されました。電気・ガス・水道などのインフラを引き込むために、第三者の土地を掘削することができると明文化されています。また、配管などを継続的に他者の所有する土地に埋設することができるようになりました。

例えば、購入した土地に水道管を引き込むために私道の掘削工事が必要な場合、私道の所有者に通知をする必要があります。

改正前までは承諾が必要だったため、私道の所有者が数十人いる場合は承諾を得るだけでも一苦労でした。しかも承諾料(一般的には数万〜数十万円)を私道の所有者に支払うのが通例でした。私道の所有者によっては、承諾する優位な立場を利用して法外な承諾料を請求してくるケースもあり、トラブルの温床になっていました。

しかし改正後は、地上の利用を制限する場合、次の「償金」の支払いが必要なことが明文化されました。

  • 掘削などで一時的に土地を利用するときに発生する損害:実損額
  • 地上に給水管などを設置し、その場所の使用が継続的に制限されることによる損害:設備設置部分の使用料相当額

ただし、地下に給水管を埋設して、地上の利用を制限しない場合は2つ目の使用料は支払う必要がありません。また、私道所有者から設備の設置を承諾することに対して承諾料を求められても、応じる義務はないと法務省の民法改正と「共有私道ガイドライン」の改訂 についての「ライフラインの設備の設置・使用権2」に明記されています。

例2. 住宅ローンを組む時には、私道所有者全員からの承諾書が必要

私道に接する不動産を購入するときの住宅ローンでも問題が発生することがあります。

私道持分が無い私道に接している土地を購入する場合、金融機関が融資を渋るケースがあります。なぜなら融資後に、私道所有者から通行禁止と言われたら、回収出来ないリスクが高まるためです。

そのため、ほとんどの金融機関は、「私道所有者全員の道路掘削の承諾書を提出すること」を条件とします。

私道に接する不動産を購入する場合は権利関係を必ず調べるべし

私道に接する土地や建物を購入する場合は、しっかりと権利関係を調べた上で判断することが大切です。

私道の所有者を調査するためには、法務局で公図を取得して、私道部分の地番を調べます。 そして私道部分の地番の「登記事項証明書(登記簿謄本)」を取得します。

特に私道負担が無い場合は、仲介する不動産会社にリスクの有無を必ず確認しましょう。

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