不動産売買に関わる法律は多岐に渡りますが、本コラムでは、これから数回に分けて建築基準法について紹介していきます。
日頃から不動産に接する機会が少ない一般の方々にとっては、建築基準法は馴染みの薄い法律だと思います。
用語だけを聞くと難しく感じてしまうかもしれませんが、実際はそんなに難しくありません。
大切なポイントに絞って取り上げていきますので、ぜひお役立て頂ければと思います。
建築基準法はどんな法律?
はじめに建築基準法とは一体どのような法律なのか見ていきましょう。
建築基準法は
「建築物の敷地、構造、用途等に関する最低の基準を定めて、国民の生命や健康、財産の保護を図ることを目的としています」(建築基準法の条文より抜粋)。
具体的には接道に関する制限や用途規制、建ぺい率、容積率など、不動産の売買取引においても密接に関係してくる規定が定められています。
そのなかでも建築基準法の肝と言えるのが、住生活での安全な生活の実現であり、建築物そのものの安全性の確保は日本全国すべての地域で適用されます。
私たちのような一般消費者であれプロの不動産業者であれ、この建築基準法をクリアしなければ新たに建物を建てることができません。
実務上のプロセスとしては、これから建物を建てようとする者は、実際に建築に取り掛かる前にあらかじめ管轄する役所に建築許可の申請を行い、建築確認を受け、「確認済証」と呼ばれる書面の交付を受ける必要があります。
また、建物を建築した後も役所に事前に届け出た内容と相違がないか検査を受ける必要があり、無事問題なく検査が通れば「検査済証」が交付されることになります。
この検査済証は、その建築物が建築基準法をクリアしている証明書のようなものにもなりますので、中古不動産の売買取引時にはこの検査済証の有無は非常に重要な役割を果たします。
ただし、検査済証が有り、建築基準法の規定をクリアしていたとしても、その後に無許可で増改築をしているケースもありますので、買主側は検査済証を基に現況と違いがないか確認することは必須です。
ちなみに建築基準法でいう建築とは、建築物を新たに建築するほかに増改築、移転する行為も含まれます。
違反建築物と既存不適格建築物の違いはなに?
違反建築物とは、建ぺい率や容積率、接道義務などの建築基準法に違反している建築物、または先ほど説明した建築確認(確認済証)を受けていない建築物のことをいいます。
違反建築物に対する処置は厳しく、除去や使用禁止などの命令を受けることがありますので、中古不動産、特に中古の戸建を購入する場合は違反建築物に該当していないか必ず確認しましょう。
また、この違反建築物とは別に既存不適格建築物と呼ばれる建築物があります。
名称が似ているため、違反建築物と同じように思われがちですが、内容は異なります。
既存不適格建築物とは、建物を建てた当時は適法であったものの、その後の法令や都市計画などの改正や変更により、現在は適法でなくなってしまった状態の建築物をいいます。
既存不適格建築物は、違反建築物と違い、基本的に除去や使用禁止などの処置を受けることはありません。
実際に中古不動産の市場では、既存不適格物件をたまに見かけることがあります。
注意すべき事としては、既存不適格建築物を購入後、建物内の小規模なリフォーム程度であれば特に問題ありませんが、大規模な増改築を行う場合は現時点の法律に従う必要があります。
なお、2012年に建築基準法の一部が改正され、既存不適格建築物を増改築する際、増改築する面積が床面積の2分の1を超える大規模なケースであっても、耐震性などの一定の基準をすでにクリアしていれば、新たな構造耐震規定の全てに適合しなくても大丈夫となりました。
以上、第1回目の今回は建築基準法の概要と違反建築物と既存不適格建築物の違いについて紹介しました。
建築基準法は専門的な法律ではありますが、大枠の概要を理解することは難しくありませんので、ぜひ不動産売買時の知識としてお役立て頂きたいと思います。
次回は建ぺい率と容積率について取り上げます。お楽しみに!